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1956年のミス・マンボ
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)
前回の記事を書くにあたって、YouTubeでロジャー・ニコルスをいくつか聴いた。ご存知の方も多いでしょうが、YouTubeで動画を見ていると、はしっこのほうに、こんなのもありますよ、いかがですか、という感じで、さらに膨大な量の動画が紹介されるけれど、そんな中から見つけたうた。

○YouTube - "The Drifter" - Rita Calypso (2004)

ロジャー・ニコルスとポール・ウィリアムズによる名曲、うたっているのはリタ・カリプソ。声なのかディクションなのか、印象がふと、土岐麻子と重なる瞬間がある。あまり美人ではないティーネイジャーが、お気に入りのモデルの写真を見ながら、顔をいろいろと傾けて、うん、この角度だと少しだけ似ている、と納得して、そしてすぐ落ち込むような、その程度の似方。

リタ・カリプソ。誰もこれを本名だとは思わない。いかにも芸名です、といった風情がいい。そういうひとたちが、昭和の時代にはたくさんいた。横山ノック。エルヴィス・コステロ。美空ひばり。

リタ・カリプソはCDを1枚持っているだけだけど、ミス・マンボにならお酌をしてもらったことがある。とはいっても、昭和ではなくて平成になってからの話。ふたつ前の会社の先輩のご母堂が、昭和31年度のミス・マンボだった。それを知ったのは、たまたま職場の飲み会の帰り、同じ方向に向かう電車の中でのこと。酔っていたのだろう先輩の、「じゃあ、これから見に来る?」との誘いをほぼ自動的に承諾し、小1時間後には元ミス・マンボと対面していた。

結婚して子供を産み、そしていまではミセスとなった元ミス・マンボは、失礼ながら、年齢相応のひとりのご婦人にしか見えなかった。先輩の「○○くん(わたしの本名)は音楽好きなんだよ、なんかなかったっけ? 昔の写真とか」とのリクエストに答えて、写真やら、マラカスやらを引っ張り出してきてくれた。調子に乗って「マンボ・ズボンをお持ちではありませんか? わたしはあれの実物を見たいと長いこと願い続けてきたのです」と訊いてみたが、昔は持ってたけど、との返事だった。

写真は、新聞の切り抜きなどと一緒に、底の浅い、平ぺったい箱にしまわれていた。モノクロのものばかりの中、小さな、定期券くらいの大きさのカラー写真が1枚。和服を着たミス・マンボが、やや緊張したおももちで、ラテン系のバンド・リーダーに大きな花束を手渡している。男は花束を受け取りながら、彼女を抱き寄せようと左腕を伸ばしている途中のようにも見える。これは誰なのだろうと写真をひっくり返してみると、「マンボの王様 ペレス・プラードさんへの 花束贈呈」と万年筆で書いてあるのが読めた。顔を上げると、還暦を過ぎた元ミス・マンボが、お盆になにかを乗せてこちらに近づいてくるのが見える。
音楽
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