Eat Much, Learn Slow (& Don't Ask Why)

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You're Gonna Make Me Lonesome When You Go きみが行ったらさみしくなるよ
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)
愛がぼくのドアを通りすぎていくのは
今までだって見てきたけれど
こんなにすぐそばで
こんなにもあっけなく
こんなにもゆっくりだったことはなかったな
ずっとめくらめっぽうやってきたわけだけど
なにかが正しくないとしたら
それは、間違いってこと

きみが行ってしまったら
さみしくなるだろうな

空高くにはウロコ雲
知っていたのは気軽な恋ばかり
いっつも低いところからつきあげてくるようなやつね
今度の恋はもっと正しくて
狙いは正確、回りくどさのかけらもない
だから
きみが行ってしまったら
さみしくなるだろうな

パープルクローバーとクイーンアンレース
きみの顔にかかるあかね色の髪
知らない、なんていわれたら
ぼくは泣き出してしまうかも
なにを考えていたかも、もう思い出せないくらい
きみにすっかりダメにされてしまってるから
ね?
きみが行ってしまったら
さみしくなるだろうな

丘の斜面では花々が咲き乱れ
コオロギがあちこちで韻を踏む
川は青く、ゆるやかにけだるく流れ
きみとならいつまでだって一緒にいられそう
時間なんて気にせずに

今までだって状況は悲しい結末を迎えてきたし
結びつきはことごとくひどいもんだった
ヴェルレーヌかランボーかってなもんで
だけど
そんなあれやこれやと
この恋を
比べるなんてできっこなくて
つまり
きみが行ってしまったら
さみしくなるだろうな

きみなしで取り残されたら
ぼくはいったいなにしてるんだろうって
気持ちになるだろうな
ぼくはいったいなに言ってるんだろうって
気持ちになるだろうな
自分にうんと小言をいいたいような
気持ちになるんだろうな

なつかしのホノルルで
サンフランシスコで
アシュタビュラで
きみを探してしまうに違いない
今すぐに出ていかなくちゃいけないんだろ、
それは分かってる。
でもきっとまたきみに会うつもり
高い空の上で
せえたかノッポの草のなかで
愛するものたちのなかで
とはいっても
きみが行ってしまったら
さみしくなるだろうな

原詞

−−−

ボブ・ディラン「You're Gonna Make Me Lonesome When You Go」の日本語訳。

たまたまなのか、そもそもそういう歌が多いのか、ディラン=硬派、なイメージをくつがえすようなものばっかり選んでしまっている気がします。拙訳ではニュアンスが伝わらないでしょうが、すごいですよねえ、これ。完全な恋愛バカ。煩悩のかたまりみたいな曲。そのへんがみうらじゅんを引きつけるのかしらん。

原曲は75年の『血の轍』に収録。エヴリシング・バット・ザ・ガールのベン・ワットのソロ作『ノース・マリン・ドライヴ』でも採り上げられていましたが、どんな感じか忘れました。たぶん、ネオアコ?みたいな? 訳してみようと思ったのは、マデリン・ペルー『ケアレス・ラヴ』収録のカヴァーで魅力に気付かされたのがきっかけです。

最後のほうに出てくるアシュタビュラ Ashtabula は、オハイオ州の地名。

今回に限りませんが、ある程度足したり引いたりして、かなり勝手に訳しております。ご使用の前に、厳密な翻訳ではないことをあらかじめご了承くださいませ。
翻訳
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Love Minus Zero/No Limit (「愛」−「ゼロ」)÷「無限」
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)
ぼくのあのコときたら、しゃべってるのに、まるでだまってるみたいなんだ。
理想だとか暴力だとか、口にしないもんだから。
あのコはじぶんが誠実だなんてアピールしなくたっていい。
氷みたいに、炎みたいに正しいんだから。
みんながバラを持ってくる。
しきりに約束をかわそうとする。
ぼくのあのコは花のように笑っている。
バレンタインの贈り物でも、あのコは買えやしない。

コンビニやらバス停やらで、
みんな、世の中どうなってんだっておしゃべりしてる。
本を読んで、他人のことばを繰り返して、
分かったようなことを壁に書きつける。
未来について話すひともいる。
ぼくのあのコときたら、物静かに話すんだ。
あのコは知っている。
失敗ほど成功に近いものはないことを。
そして、その失敗はまったく成功なんかじゃないってことを。

マントと短剣はぶらさがり、
マダムはろうそくを灯す。
騎手たちの儀式では、人質ですら怨みをいだく。
マッチ棒の彫刻はこなごなに砕け、
ぼくのあのコときたら、気にするそぶりもなく目くばせ。
言い争ったり判決をくだしたりするには、
あのコはものが見えすぎているんだ。

橋は真夜中に身震いし、
田舎医者はあてもなく歩き回る。
賢人たちの贈り物を期待しながら、
銀行家の姪は完璧なるものを探し求める。
風はハンマーのように吠え、
夜は冷たい嵐。
ぼくのあのコときたら、ぼくの窓にやってくる
翼の折れたカラスみたいなんだ。

原詞

−−−

ボブ・ディラン「Love Minus Zero/No Limit」の日本語訳。

この曲からなぜかわたしは学生運動を想起してしまうのですが、それは、第2連のあたりからの連想かもしれません。後半は例によってよく分かりませんでしたが、全体的には、俗に言う、理想のタイプというやつについての歌かもしれません。ちなみに、鈴木には理想のタイプなどというものは原則としてありませんが、ポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」に出てくる女性はなかなかいいと思います。

なんとなく、「赤頭巾ちゃん気をつけて」を思い出したりもしたので、ほんの少しだけ庄司薫風の味付けにしてみました。「ぼくのあのコ」という呼び方からは、西岡恭蔵の「プカプカ」を思い出してくれてもいいです。どうせだったら、ついでに、「ぼくのあンコは〜」と西岡恭蔵風にこの詩を朗読してくれると嬉しいです。

ディランのオリジナルは65年の『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』に収録されていました。ブリジット・セント・ジョンによるカヴァーが好きです。

"there's no success like failure"をどう取るかについては、意見が分かれるところでしょう。あるいは、ネイティヴのひとにとっては解釈の余地のない表現なのかもしれませんけども。
翻訳
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Simple Twist of Fate 運命のいたずら
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)
ふたりは公園に座っていた。
空は暮れていき、彼女に見つめられて、
彼は火花が骨までうずいてくるのを感じた。
じつにそんときだった。
さみしくなって、まっとうにならなくっちゃなあと思ったのは。
運命のいたずらってやつには、気をつけていたもんだったが。

ふたりは古い運河に沿って歩いた。
おれはよく覚えているけどね、少し混乱していたっけな。
で、ネオンが明るく燃えるホテルで立ち止まった。
彼は夜の熱気が貨物列車みたいにぶつかってくるのを感じた。
運命のいたずらってやつといっしょに、やってきたんだ。

彼女がアーケードを歩いていくと、
サクソフォンがどこか遠くで鳴っていた。
壊れたシェード越しに飛びこんでくる光に彼が目を覚ましたころ、
彼女はゲートのところにいる盲人のカップにコインを投げ込む。
で、忘れてしまった。
運命のいたずらってやつを。

彼が目覚めると、部屋はがらんどうで、
彼女はどこにもいなかった。
まあいいや、と言い聞かせて窓を開け放った。
関係あるんだろうか。
運命のいたずらってやつが運んできた、この空っぽの気持ちと。

時計の音が聞こえる。
しゃべるオウムと一緒に彼は歩き出し、
船員たちがみんなやってくる海辺の波止場で彼女を探す。
きっと彼女はまた彼をつまみあげるんだろうが、
いったいどれくらい待たなくてはならないのだろう。
運命のいたずらってやつが、もう一度やってくるまでには。

みんな、それは罪だって言う。
知りすぎたり、感じすぎたりすることを。
おれは今でもまだ、彼女はおれの片割れだって
信じているけれど、指輪はもう、なくしちまった。
彼女が生まれたのは春で、おれが生まれたのは遅すぎた。
あの、運命のいたずらってやつのせいなんだ。

原詞

−−−

鈴木が適当に訳したボブ・ディラン「Simple Twist of Fate」の歌詞です。この曲は、75年のアルバム『血の轍』に入っていて、一般的な邦題は「運命のひとひねり」です。これを選んだのは、別にいちばん好きだからとかいうわけではなく、昨日、このアルバムを聴き直していたのと、グルーヴァーズの日本語ヴァージョンで親しんでいたからです。

訳してみると、時制と人称に気をつかっていることが分かります。訳では適当にごまかしましたが。内容は……有体に言って、女を買った歌ですよね。私、昔、ディランの歌に出てくる女性像を研究、糾弾するフェミニストのディラノロジストがいたらおもしろい、なんて考えていましたが、ひさしぶりにそれを思い出した次第。
翻訳
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