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「素晴らしいアメリカ音楽」解題
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

この記事は、普通に読める日本語の雑誌「トラベシア」Vol.5(→☆)にわたし(鈴木並木)が書いた、「素晴らしいアメリカ音楽」のネタ元と参考資料の一覧です。

そもそも、わたし(1973年生まれ)と同年代で、普通に生活してポピュラー文化を愛好するような生活をわたしと同じように送ってきていれば、ネタ元のほとんどは、あっあれだな、とピンと来るはずですが、そうでもなかったり、あるいは忘れていたりもするでしょうから、こうしてまとめておくのもまったくムダではないだろうと思います。

○P70
・タイトル
フィリップ・ロス「素晴らしいアメリカ野球」(原題:The Great American Novel)より。昔、読んだときは、当然「グレイト・アメリカン・ノヴェル」の概念を知らなかったので、なんでこういう邦題になるんだろう、と思ったんだった。集英社文庫版の井上ひさしの解説が泣けちゃう。いま出回っている新潮文庫版にもこの解説は再録されているので、立ち読みしてみてください。

・冒頭
最初の段落に出てくる人名と地名はすべて実在ですが、こういう具合にいちいち全部注釈をつけていると膨大な長さになってしまうので、ほどほどにします。書き終えたあとの4月上旬、初めて訪れた三鷹北口の古本屋、りんてん舎で、高橋源一郎「ゴーストバスターズ」をふと手に取ってみて、この冒頭に無意識のうちに影響された可能性はあるな、と思いました。同様に、書いている途中にはまったく思い出しもしなかったのは、筒井康隆/岡本喜八「ジャズ大名」。

・セントルイス大学のビリケンズ
セントルイス大学のすべてのスポーツ・ティームは、競技の種類を問わずみんなこの名前。ちなみに野球部の創立年はちょっと調べたけどわからなかったので、1932年にはなかった可能性もある。

○P71
・球場跡地の隣にあるハノーヴァー庭園
旧広島市民球場跡地の北側にある庭園。

・現在のニジヤ・マーケット
本作に出てくる地名の中で、わたしが実際に訪れたことのある唯一の場所(2012年に店の前を通りかかった)。ポスト・ストリートとウェブスター・ストリートの角。もう1本西側の通りが、有名なライヴ・ハウスのあるフィルモア・ストリート。

- Japantown Atlas - San Francisco Japantowns
http://japantownatlas.com/map-sanfrancisco.html

・ウォーバッシュ鉄道
Wabash Cannonballが列車の名前であることは今回初めて知りました。戦前の時刻表も検索するといろいろ出てきます。

・セントルイスを拠点にしていたトランペッター、ルイス・クラークと彼の楽団で、西部に向けて初めての楽旅(エクスペディション)の途についたばかりだった
アメリカ西部を初めて探検した、ルイス&クラーク探検隊(1804−1806)にちなむ。この探検隊の(ほぼ)出発地がセントルイス。ちなみに、カントリー・ロック・デュオ、ディラード&クラークのアルバム『The Fantastic Expedition of Dillard & Clark』は前から知ってた。1932年当時、セントルイスからミシシッピ州を渡った東側、イリノイ州イースト・セントルイスには、マイルズ・デイヴィス(1926−1991)が住んでいた。子供のころ、マイルズもクラークの音楽をラジオで聴いていたはずである。

○P72
・ロイ・カウフマン
Kaufmann=商人(独)。東欧系ユダヤ人と思われる。ちなみに本作にはアングロ・サクソンはほぼひとりも出てきていないはず。

・全米屈指の規模を誇っていたユニオン駅
1894年9月1日のグランド・オープニングの様子。
http://www.grandhall-stl.com/wp-content/uploads/sites/4/2015/09/Grand-Opening.jpg

○P73
・彼の誕生日は明治41年2月29日である
1908年2月29日。マキノ雅弘、バルテュスと同年同日生まれ。

・カーディナルスには黒人選手はまだひとりも在籍していない
初めての黒人メジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンがブルックリン・ドジャーズで初出場するのは1947年4月15日。
- Count Basie "Did You See Jackie Robinson Hit That Ball?"
https://youtu.be/r-7Ac2LVVYU
吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ「栃東の取り組み見たか」は、ベイシーのこの曲の替え歌。

・ロッソニアン・ホテル
デンヴァーのこのへんについての記事。ロッソニアンの写真もある。
- Denver's "Harlem of the West"
https://www.rmpbs.org/blogs/rocky-mountain-pbs/denvers-harlem-of-the-west/

・ファイヴ・ポインツ地区の南側にあった日本町
サクラ・スクウェア、コロラド州知事ラルフ・ローレンス・カーといったワードで各自ご検索ください。

○P74
・ココナッツ・グローヴ
全米最大なのは本当ですが、表現効果のために大きさはかなり誇張して書いてある。ソルトレイクシティはモルモン教の総本山、宗教都市ですが、どうしてここにそんなでかいダンスホールができたのかは調べきれなかった。ちなみにわたしの好きな斉藤由貴がモルモン教徒。

○P75
・身長8フィート近い巨漢
8フィート≒244センチ。ギャグです。

・L街/N街/グレイハウンド
L街、N街は頭文字にしているわけではなく実際にそういう通りの名前。現在でもC StreetからX Streetまであるようです。グレイハウンド、そんな昔からあったのかよ、と思うでしょうが、1930年代初期の路線図がこちら。
- The Greyhound Lines, c. early 1930's
https://www.spackantiquemaps.com/inventory/greyhound-lines-c-early-1930s

○P76
・サクラメントの日系人社会
このへんの記事を参照。
- Sacramento mystery: What happened to Japantown​?
https://www.kcra.com/article/what-s-the-story-behind-the-disappearance-of-sacramento-s-japantown/9084454

- Japantown Atlas - Northern California - Sacramento
http://japantownatlas.com/map-sacramento.html

・ウォルナット・グローヴの、カワシモと呼ばれていた日系人コミュニティ
- Preserving California's Japantowns - Walnut Grove
http://www.californiajapantowns.org/walnutgrove.html

・フォスターの「おおスザンナ」
オリジナルの歌詞についてはこちらを参照。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~lyricssongs/TEXT/S1623.htm

日本語ではないけど気に入っているヴァージョンは、ガールズ・フロム・バイーア(=クアルテート・エン・シー)のもの。よく、日本人の音楽家がアメリカで成功できない理由として、英語の発音がよくないことがあげられるけど、そんなに大きな理由なのかな、とずっと前から疑問に感じている。こういうのを聴くと余計そう感じる。
https://youtu.be/JiV8UfmmE1Y

○P77
・タク・シンドウ
1922年サクラメント生まれ。1927年には一家でロサンジェルスに移住しているので、このサクラメント公演のことは知らなかったはず。

・サウス・セントラル・アヴェニューは西海岸きっての黒人街で
以下の記事を参照。
- Mapping the jazz clubs that made Central Avenue swing
https://la.curbed.com/maps/central-avenue-history-jazz

- Jazz History: South Central Los Angeles
http://thedevilsviolin-artjohnson.blogspot.com/2014/07/jazz-history-south-central-los-angeles.html

- When Central Avenue Swung: The Dunbar Hotel and the Golden Age of L.A.'s 'Little Harlem'
https://www.kcet.org/history-society/when-central-avenue-swung-the-dunbar-hotel-and-the-golden-age-of-las-little-harlem

○P78
・チャーリー・C
ハワイのホノルル警察に勤める(架空の)中国系アメリカ人刑事、チャーリー・チャン。1931年から彼が主役となったシリーズがつくられ始めた。演じているスウェーデン出身の俳優、ワーナー・オーランドのおっさんくさい容貌はフジイとは似ても似つかなかったはずだが、当時の人種意識はまあこんなもんだった。「ハスラーズ」でコンスタンス・ウーが「おい、ルーシー・リュー」と声をかけられるあたりも参照した。

- UNKNOWN HOLLYWOOD 知られざるハリウッド・クラッシック「#09|名探偵、聖林に現わる」
http://ryotsunoda.com/知られざるハリウッド・クラッシック-unknown-hollywood/unknown-hollywood moreinfo/

○P79
・必ず控え室のシャワーで埃と汗とを洗い流してから
本作の執筆はおもに2020年の2月から3月にかけておこなわれ、4月初めに初稿を書き終えた。

・まったくなんてところなんだろう、ここは!
1975年に『There's No Place Like America Today』を発表するカーティス・メイフィールドは1932年の時点ではまだ生まれていないし、同作のジャケットのイラストの元ネタとなった写真『At the Time of the Louisville Flood』が撮影されたのは1937年だから、あらゆる意味で歴史的に正しくない。

- Margaret Bourke-White "At the Time of the Louisville Flood"
https://www.moma.org/collection/works/46797

○その他、なんとなく参考にしたもの
細川周平「サンバの国に演歌は流れる−音楽にみる日系ブラジル移民史−」(中公新書)
海外移住資料館(横浜・みなとみらい)
https://www.jica.go.jp/jomm/

日本の外に出ていった日本人と日本語のことは引き続き気にしていくつもりで、その過程でなにか書くこともあるかもしれませんが、具体的な予定はないので、ひとまず、「トラベシア」Vol.4「日本語について」(→☆)所収の「米と油」をお読みいただければと思います。

蛇足
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増刷にあたって
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

おかげさまで「トラベシア」Vol.5「音楽と金」(→☆)、初刷分300部が2週間であっけなく品切れとなりました(*)。ありがとうございます。ここまでの状況を軽く小まとめしようと思いますが、お話を始めるにあたって、みなさんにまず、「完売しても莫大な赤字が出ている状態で、増刷してもそれは解消されない」とはっきりとお伝えしておきます。

そもそも、今回なぜ「音楽と金」なのかって話をするためには、まず「わたしと労働」から始めなくてはならないのですが、これ、どこいらへんまでさかのぼればいいんだったっけかな。新卒のときに就活をしなかったあたりからか。それとも、夜勤で働いていたホテルで、27時にチェック・インして29時にモーニング・コールを頼んだりする(しばしば複数回のコールでも起きられない)電通の子会社の若社員を日常的に見ていた思い出をスタート地点にしてみようか。

たぶんそのころはまだ、「やりがい搾取」という言葉はなかったけれども、メンツの入れ替わりの激しさを見ていると、なにが起きているのかは想像がついた。労働条件の厳しい職場をすぐに辞めていく者がいるのは当然として、人気の業種では、その条件のままでもすぐに代わりが見つかるってのがポイント。芸術文化にかかわる職場では珍しくない話らしい。たとえばアップリンクも、たぶんそうだろう。そうなると、わたし程度の「好き」では、好きなものを仕事にするのは無理だな、と思ってしまう。文脈は違うだろうけど、原田和典さんは「音楽を好きなひとはそんなに多くないですよ」と言っていた。安田謙一さんが専業のライターをやめて(?)バイトを始めたと聞いたときには、安田さんほどのひとでもそうなのか、とショックを受けた記憶もある。

で、劣悪な労働環境の話に戻る。左翼のわたしは、そうした環境は当然すぐに改善されるべき、と考えているけれども、一方で、怠惰な労働者のわたしは、仕事にやりがいなんか求めるから間違い(過労死など)が起きるんだよ、とずっと考えてきた。そのへんの心情/信条は、「トラベシア」Vol.2(特集「労働」!)(→☆)や、「生活の批評誌」no.3(特集「ひとりで無職」!)(→☆)に書いた。しかしそれからさらに何年かたって、現時点では、人間、まったく興味の持てないことを週に40時間もやるのはしんどすぎる、と考えている。そしてわたしが芸術文化的な物事に対する色気がないわけではないのは、私財をなげうってこんな雑誌をつくっていることからも明らかでしょう。

ということで、だいぶ現在に近づいてきた。1〜2年前だったか、小さなライヴハウスに出ているようなミュージシャンたちが、どうやって本業と音楽のバランスをとっているのか、バンドであればどうやって運営しているのか(担当楽器ごとにかかる金も違うだろう)、みたいな話を、月にひとり/ひと組くらいずつ聞いて、ウェブサイトに載せていったら面白そうだ、と思い付いた。そのインタヴューではそのひとのやっている音楽の中身には立ち入らない。人間にとって、限られた金をどこにどうやって使うのか、という以上に重要な思想はないからだ。予算×時間≒音。

結局そのアイディアが具体化することはなかったけれども、そうだ、考えてみたら俺、自分のメディア持ってたわ、と気付いて、そちら向けにアダプトしてみたのが、今回できあがったものです。お読みになったみなさまやお取り扱い店様で、「音楽と金」というぶっきらぼうなテーマの裏側に、インディ的な表現活動をしながら生きていくとは、みたいなアレが隠されていること(あるいは隠れきれてないこと)を指摘してくださった方がいらして、あらためて、なるほど自分はそういうことに興味があって、そういう理由でそういうものをつくったんだな、と気付かされました。

あと、表紙について。デザイナーの村松さんから当初いただいた案がしっとりめ(文芸っぽい?)だったので、もう少し明るくしてください、とお願いしたらこれになりました。蒸し暑い時候にさわやかで気持ちいい配色になりましたが、「ブラジルカラーですね」と言われて、はっとした。ぜんぜんそんなこと意識してなかったから。こういうのがあるから面白い。

増刷分は今週末頃から順次発送・配本されていく予定です。もう少々お待ちください。BOOTHやわたしに直接連絡するなどしていまのうちにご注文いただくと、着荷したらすぐ発送できます。

ところで既刊、Vol.4「日本語について」も販売中です。今回の号と比べて、あなたが御存知の書き手の割合が低いかとは思いますが、「トラベシア」は普通の雑誌ではなくわたしが個人で編集している雑誌で、すべてわたしが頼んで書いてもらっています。執筆者のみなさんが素晴らしい原稿を寄せてくださっているのはもちろんとして、それと同じくらい、誰が書いていても、つまりわたしを読んでいることになるわけです。ですからこちらのVol.4「日本語について」も、「音楽と金」のわたしの日本語を楽しんで読んでいただけたみなさんの期待にお応えできる日本語になっています。だからあわせて読みたい(→☆)。

*→ 300部のうち、執筆者にあげたり、つくるにあたってお世話になったひと(今回はいつもより多かった)に送ったりするので、実売は240部くらい。

雑記
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普通に読める日本語の雑誌「トラベシア」第5号発行のお知らせ
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

(最終更新日:2020/08/06)

!各店舗では絶賛販売中。増刷分が入荷しましたので、通販もすぐ発送できます!

○普通に読める日本語の雑誌|トラベシア|Vol.5|音楽と金

2020年07月10日 第1刷発行|300部
2020年07月25日 第2刷発行|200部
A5判|ヨコ書き|86ページ
500円(+ところにより消費税)

オン・チャイ・クーン|他人の靴
ケヴィン・スミス|銭湯と梅干しハイとライヴハウス!−ぼくが日本に住むようになったきっかけの話
佐々木美佳|2000ルピー札をポシェットで握りしめる
サミー・ミラー|使命感の大切さについて
柴崎祐二|繊細な経済圏のために 音楽と金をめぐって
ジョー長岡|瞽女をめぐる旅
ジョン・アリスン|我が父モーズ
杉本拓|本業と副業−妥協せずに芸術家として生きることは可能か?
鈴木並木|素晴らしいアメリカ音楽
たちなみえみ|うた 日々を綴る
藕翔|Music Makes Money, But Money Makes Me Moody
寺田俊彦|小さいからこそ続けられる−CDショップを続けること
原田和典|新たなる残骸
ひな|消費と愛用
森本アリ|新世界で橋が渡されグッゲンハイム
矢川俊介|それでも、音楽雑誌をつくる
安田謙一|カニコーセンに金の話ばっかり聞いた。
若木康輔|クロスワード・トラベシア

ともちゃんインタヴュー|「推し」で世界が広がった

イラスト・ロゴ原案|畑中宇惟
デザイン|村松道代
編集・発行|鈴木並木

◇音楽の現場から|鈴木並木
今年もまた、日本語の時間がやってきました。これまで本誌では、いわゆる一般人のみなさまに多く参加していただいておりましたが、今回は方針をやや転換して、テーマに沿って、実際に音楽と金に職業っぽくかかわっている方々を中心に据えてみました(*)。具体的には、ミュージシャン、ミュージシャンのご子息、音楽雑誌の編集者、ディレクター、ライター、レコード店主などです。

となると、「音楽について詳しくないんですけど読んでも大丈夫でしょうか」みたいな質問をいただきそうな予感があります。大丈夫です。特定の音楽ジャンルやミュージシャンのファンに向けた、いわゆる「音楽雑誌」ではありません。いままでどおり、さまざまな人たちに、そのひとならではの話をしてもらう、普通に読める日本語の雑誌です。

近年、音楽の魅力はなにをおいてもライヴの場にこそある、みたいな意見をよく見かけます。「音楽業界」の既存の「ビジネス・モデル」が「シュリンク」していきつつある状況と、いま現在の渇望感とがいい感じに掛け合わされれば、そうした声が強くなるのは(商業的にも)自然な流れでしょう。しかし、わたし個人としては、その立場には必ずしも賛同していません。音がどこでどんなふうに鳴っていようとも、あるいは鳴っていなくても、音楽の形をしていなくても、「音楽の現場」はさまざまな姿で存在しうるはず、と考えています。その多様性と可能性を、探ってみたい。

最後に(できるかぎりすみやかに、なんの話をしているのかよくわからなくなることが望ましい)補足を。原稿を依頼してから現在に至るまでのあいだに、世間の状況が通常あり得る程度を大きく超えて変化したため、もしかするとそうした事態への対抗策や提言のようなものを期待してお読みになる方がいらっしゃるかもしれません。申し訳ないのですが、そういう「素早い」性質の雑誌ではないです。ただし、いくつかの原稿には、執筆者の執筆当時の状況の痕跡が刻まれています。あなたの本棚の「現代史」のコーナーに並べてみてください。

*ここで「音楽」と言っているのはおもに広義のポピュラー音楽です。

◇購入方法
○通販(本人から)
ご住所、お名前、冊数、ご希望のお支払い方法、行ってみたい場所(任意)を、メール(suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp)またはツイッターのDM(@out_to_lunch)でお知らせください。折り返し、手続きについてご案内します。

送料は、日本国内の場合、5冊くらいまでは何冊でも、送料一律180円です。それ以上は別途計算。送料込みの合計振込額は、1冊→680円、2冊→1180円、3冊→1680円、です。国外へは、送料実費で対応します。

支払い方法は下記からお選びください。前払いでお願いします。
・三菱UFJ銀行口座への振込み
・みずほ銀行口座への振込み
・Amazonギフト券(メールタイプ) ←Amazonのアカウントお持ちでしたら、手数料かからず支払いできます。受取人を「suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp」と指定してください。
・PayPal ←宛先のメールアドレスについてはお問い合わせください。

わたしの銀行の口座は昨年から変わっておりません。ご存知の方は、わたしからの連絡を待たずにさっさと振り込んでいただいても大丈夫です。

あと、これはむろん強制ではないので読み飛ばしてくださってぜんぜんかまわないんですけど、既定の額よりいくらか多めに振り込むことによって、応援する気持ちを示すことが可能です。

○通販(サイト経由)
クレジットカードやコンヴィニ払いなどで購入したい場合は、BOOTHをご利用ください。知らないひとにメールなどを送ったりするのが生々しくて抵抗があるとか、面倒、という方も。結局わたしが家から発送するので同じことですが。「トラベシア」のブースはこちら →☆

あと、これはむろん強制ではないので読み飛ばしてくださってぜんぜんかまわないんですけど、既定の額よりいくらか多めに支払える仕組みがあります。応援する気持ちを示すことが可能です。

○実店舗での購入 Tempo!!
2020/08/06現在、以下の各店舗に納品済みです。お店によってはバックナンバーを取り扱っているところもあります。また、売り切れているところもあるかもしれません。詳細はそれぞれのお店にお問い合わせください。ただし、開店直後や閉店間際に電話するのは失礼なのでやめましょうね。

乃帆書房(秋田市)
PEOPLE BOOKSTORE(茨城県つくば市)
古書往来座(東京・南池袋)
古書ほうろう(東京・上野池之端)
Title(東京・荻窪)
タコシェ(東京・中野)
ディスクユニオンJazzTOKYO(東京・御茶ノ水)
ディスクユニオン昭和歌謡館(東京・新宿)
ブックユニオン新宿(東京・新宿)
H.A.Bookstore(東京・蔵前)
本屋ロカンタン(東京・西荻窪)
YATO(東京・両国)
東都records&books(東京・湯島)
ココナッツディスク吉祥寺店(東京・吉祥寺)
ポルベニールブックストア(神奈川県鎌倉市)
恵文社一条寺店(京都市)
Calo Bookshop & Cafe(大阪市)
blackbird books(大阪府豊中市)
1003(神戸市)
本屋ルヌガンガ(高松市)
蟲文庫(岡山県倉敷市)
BOOKSHOP 本と羊(福岡市)
ブンコノブンコ(那覇市)

◇取り扱い希望のお店のみなさまへ Notice!!
「トラベシア」は取次などを通さない完全独立出版物となります。ありがたくも取り扱いご希望の場合は、suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp までご連絡をお願いします。基本的には7掛けでの買い切りでお願いしております。送料当方負担、もしくは直接搬入で納品します。入金用口座は三菱UFJもしくはみずほ。入金日は各店様の規定通りでかまいません。少部数もOKです。

なお、いわゆる書店様以外での取り扱いも大歓迎です。レコード店様はもちろんですが、こちらの意表を突くような業種のお店からのご連絡も、お待ちしております。ご検討用の、内容サンプルもご用意しています。お気軽にお問い合わせください。

◇リリース記念イヴェント Event!!
これまでの号の発行時におこなってきたような、映画の上映やホーム・パーティ方式のイヴェントは、いまのところ予定されていません。 ということで、いますぐには難しいでしょうが、発売記念のイヴェント(+即売会)をやってくださる奇特な書店様などを募集中です。わたし本人の分はギャラは不要です(いただければありがたくもらいます)。遠隔地で、交通費や宿泊費が発生するような場合も、全額負担してくれとは申しません。まずはご相談ください。

ただしわたしひとりが登壇するのでは集客が期待できませんので、どなたか(執筆者やスタッフ、あるいは集客力のありそうな著名人様など)との組み合わせ、あるいはわたしが司会進行的な役割のもののほうが、金銭的なダメージは少ないと思います。リトル・プレスをつくること、みたいな話ならいくらでもします。払っている原稿料の詳細以外であれば、ある程度なんでもお話しする用意があります。

告知
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2019年の映画など
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

2019年に見た映画のなかで、よかったもの。並びは見た順。

ジェームズ・ワン「アクアマン」(2018/英語)
ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン「スパイダーマン:スパイダーバース」(2018/英語)
スパイク・リー「ブラック・クランズマン」(2018/英語)
フォン・シャオガン「芳華 Youth」(2017/中国語)
野田真吉、大沼鉄郎「マリン・スノー 石油の起源」(1960/日本語)
山戸結希「ホットギミック ガールミーツボーイ」(2019/日本語)
村上浩康「蟹の惑星」(2019/日本語)
フレデリック・ワイズマン「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」(2017/英語など)
出崎統「エースをねらえ!劇場版」(1979/日本語)

+1 アルフォンソ・キュアロン「ローマ」(2018/スペイン語)

☆スペシャル・メンション

ベスト防寒具:ネック・ウォーマー
ベスト調理器具:大黒窯 手造り ごはん土鍋
ベスト・イヴェント:渋谷並木座 Vol.3(11月23日@渋谷ロフト・ヘヴン)
ワースト:会社

見る本数が減ったのと、反応する力が鈍化したのとで、なんかもうどうでもいいなと思いながらどうにかこうにか一応本気で選んだ、グッド10。「ローマ」は、見ているだけで世界のすべてを把握したような気分になれる映像のすさまじさには文句のつけようがないのに、人間観がわたしにとってはクソすぎたので番外扱い。

スペシャル・メンションなものについて。
ネック・ウォーマー。ローソンストア100で購入。ブランドなどは未確認。わりとしっかりしたフリース素材で、これが100円なのは申し訳ない。感謝。

土鍋。前からときどき気になってはいつつも、吹きこぼれるんじゃないかとか、洗いものが増えそうとかであまり本気で購入を検討したことはなかった。5月、文フリに遊びに行く前に、大森駅近くの「鯖なのに。」で鯖の塩焼き定食を食べて、鯖もさることながら、大きな釜で炊いたごはんのおいしさに感激。すぐにアマゾンでこの2合炊きを購入。2980円。米の潜在能力がきちんと引き出されている感じがする。結果としてほとんど吹きこぼれも面倒くささもなかった。電気炊飯器はしまいこんでしまって、それ以来一度も使ってません。

渋谷並木座 Vol.3。諸事情(自分のせい)により充分な宣伝ができず、集客がかんばしくなく、多額の負債をかかえるはめになったことを除けば、とても充実した時間になりました。と自画自讃しておく。

会社。業務には興味が持てるし勉強になるのですが、とはいえもちろん、金がもらえる以外の理由で積極的に毎日やりたいような活動ではない。不満は、労働時間が(自分にとっては)長いこと。毎月の平均残業時間が30時間くらい。月20日出勤するとして、1日平均1.5時間。一見たいしたことなさそうだけど、今日もなにもできなかった、と感じながら寝るのは精神衛生上よくない。残業代はありがたい。次に転職するときは、あんまり残業しなくても給料が維持できるよう、時給がいまよりも200円以上高いところに移りたい。

−−−

おまけ。2010年代(2010〜2019)日本映画、わたしのベスト10。

渡辺文樹「政治と暴力」2部作(「三島由紀夫」「赤報隊」)(2010)
宮崎吾朗「コクリコ坂から」(2011)
大西健児など「銀鉛画報会」(2012)
濱口竜介「親密さ」(2012)
佐々木友輔「土瀝青 asphalt」(2013)
山戸結希「おとぎ話みたい」(2013)
只石博紀「Future tense」(2013)
小森はるか「息の跡」(2015)
前田真人「テラスハウス クロージング・ドア」(2015)
代島治彦「三里塚のイカロス」(2017)
三宅唱「きみの鳥はうたえる」(2018)

個別のコメントは長くなるので、どこかでお会いしたときにでもゆっくりと。テン年代ベストで最初にぱっと思いついたのが「ニワトリはハダシだ」と「崖の上のポニョ」だってのは我ながら焼きが回ったとしか言いようがないですが、それはそうと、テン年代、日本の大メジャー各社はなにボヤボヤしてたんですか、とは言いたい。きっとわたしの見逃したもののなかに、素晴らしいものがあったんでしょうね。そう思わないとやってられない。

映画
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鳥たち
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

A 知ってた? 今年ももうあと10日くらいで終わりだって。

B 知ってた。年間ベスト10の発表でもするつもり?

A いや、しないよ。そういうのは年明けてから発表するもんだし。雑誌がおかしいんだよ。1月売りの号でやればいいのに、っていつも思ってる。

B じゃあ今日はなんでここにあらわれたのかな。

A 急いで採り上げたい話題があるからだよ。普通に書こうとすると、適切な文体(笑)が見つけられなくて時間がかかるからね。

B そんなたいそうな文体(笑)でもないだろうに。

A こういう無駄話の時間が必要なんだけど、とは言っても無駄は無駄だから、本題に入るね。

B いいよ。

A このあいだの日曜日、佐々木友輔「コールヒストリー」の上映に行ったんだけど。3階のシネマテークが超満員で、通路だった部分はおろか、最前列の前にも椅子が出てた。

B それは違うでしょう。

A なにが。

B イメフォの3階。「シネマテーク」はあすこでやってる上映シリーズのことで、スペースの名前は「寺山修司」だよ。チラシ見てみ。

A あっ、ほんとだ……。

B 作品の半分くらいはよくわからない、って言ってる割には、佐々木監督の映画、よく見てるよね。

A なんだかんだで、佐々木監督の問題意識……っていうとちょっとニュアンスが違っちゃうから、たぶんこんなことを考えてるんだろうなってぼくが思うところのもの、って言おうか、それに興味があるんだと思う。「土瀝青 asphalt」は、単にキネアティック系を代表する1本っていうだけじゃなくて、2010年代の日本映画の大きな成果だと思ってるし。

B 1年の総括はNGなのにテン年代はオッケーなんだ(笑)。

A 世界が、まさにそうやって、(笑)ってる場合じゃなくなりつつあるってのは、キミのような実体のない、モニター上の文字でしかない存在?の人間?でも、さすがに気付いているんじゃない? まあともかく、「コールヒストリー」の上映前に監督が出てきてさ、だいたいこんなこと言ったの。「いままでは上映の終わったあとにトークをしたりしていましたが、自分がテン年代に考えていたことは全部この作品の中に入れることができたので、トークは蛇足と考えて省略することにしました」って。

B なんかすごそうだな。どんな「テーマ」の作品なの?

A その答えになるかわからないけど、監督自身のコメントはこんな感じ。

『コールヒストリー』は、東日本大震災後の福島を舞台として、架空の都市伝説とアーティスト・イン・レジデンスを媒介に、 地域アート/参加型アートやドキュメンタリー映画制作における「リサーチ」や「撮影」が孕む構造的・制度的問題を浮かび上がらせるとともに、より普遍的なテーマ、すなわち、あらゆるコミュニケーションにかかわる「聞くこと」「受け取ること」の難しさについて思考する映画です。

ツイッターで感想をエゴサすると、自分ではまったく思いつかないようなことを書いてるひとがちらほらいて、面白いよ。

B 話がわかりやすそうだから、オレなんかでも見て楽しめるかな。

A 話は、あるよ。物語が濃い! とも思った。ほとんど普通の劇映画といってもいいんじゃないかな。いや、「普通」ではないけど。

B 劇映画か劇映画じゃないか、に無理やり分類するとしたら、昔からずっと劇映画を撮ってたひとなんじゃない?

A そうだね、俳優が出てないだけで。……出てないってことはないな。まず、カメラがとらえている映像が語り手の一人称の視点だと仮定して、で、語り手は複数いるわけだけど語りはすべて菊地ゆきが語っているから、つまり一人何役も演じている女優が画面には出てこないってだけで、うん、やっぱり普通の劇映画だ。

B めんどくせえなあ。

A めんどくさい映画だと思われるのは監督の本意ではないだろうけど、「普通」の映画の成り立ち方をあらためて、一から、回りくどく考え直す機会を得られるってのが、自分にとっての佐々木監督の作品の魅力なんだよね。

B いや、めんどくせえのは映画が、じゃなくて、キミが。

A ともかくその、回りくどく考え直すきっかけをくれるってのは、つまりは実験映画全般の意義でもあるんじゃないの。とりあえず、実験映画、をここでは、「・・・・・」に入れて、「実験映画」としておくけど。

B カッコとじとじ。「話」はぜんぶ、菊地さんの語りによって進行するわけでしょう。そうすると映像はどうなるの。っていうか、映像はそのあいだ、なにをしてるの。BGVつきのラジオ・ドラマみたいなものを想像しちゃうんだけど。

A これも、答えになるかどうか、なんだけど、画面には常になにがしかの映像が映ってる。

B 当たり前すぎるでしょ、映画なんだから。

A いや、だから、その、素晴らしい「当たり前」をもう一度、ね……。画面に映っているのはたぶんだいたい福島県の各地らしき風景で、何度も言うように、物語を進行させる役としての俳優の姿は、画面には基本的には登場しない。そうすると、ふだん映画を見るとき、いかに人間ばかりに視線が吸い寄せられているかってことを再確認させられる。と同時に、いかに映画が、というか人間が、風景を見る行為をないがしろにしてきたか、なんてことも思わされるわけ。保坂和志が、最近でもそう考えてるかわかんないけど、猫とか天気を人間の都合で、人間の心象を反映させるもの(「心象風景」!)として利用する小説を批判してたよね。風景もそうだと思う。いつもは適当に背景として扱われて、ときどき人間の勝手な都合で、さも美しいものとか崇高なものみたいに持ち上げられてさ。風景が怒るよ。

B しょせんいまの映画はまだ、人間が人間のためにやってる営為の段階だもん、仕方ないよね。それこそ、カメラがルンバに乗って勝手に映画を撮り始めるまで、100年河清を待つしかない。(→☆)

A とはいえ、現実の風景もたいていは人間がつくったものだから、「コールヒストリー」の、たまに車に乗ったりするほかは2本の三脚で歩くカメラは、なんかさ、人間から遠く離れようとして、でも離れられなくて、そもそも離れたいのかどうかもわからないまま、もがいているみたいでもあったな。

B えっ、自転車乗らないの?

A 今回は徒歩だったね。

B ふむふむ……さっき言ってた、話が濃い、ってのは、都会から福島に来たアーティストが「地域」でなにか大騒ぎを起こす、みたいなことなのかな。

A ぼくが作るとそういう安易なコメディになる可能性が高いけど、もっと本質的なんだよね。

B どゆこと。

A 助成金……たぶんたいていは税金に由来するじゃん、その助成金を使って「アーティスト」が地方に行って、それどころか滞在して、創作活動をする意味ってなんなんだろうなあ、って。

B そりゃ本質的だね。あ、それって、「コールヒストリー」でそう言ってるっていうよりは、キミの感想?

A そう。自分の感想。

B 意味はあるんじゃない? 地元ではありふれすぎていて注目されてなかったり、受け入れられなかったものを、都会に向けて売る。需要と供給。農産物とか土産物と構造は同じ。

A うん。でも売られてるのが自分のふるさとの歴史や伝統や人間だと思うと、多少複雑な気持ちにならないかな?

B なるだろうね。

A 「コールヒストリー」では、地元のひとがこつこつ集めていた地味な民間伝承というか都市伝説を、都会のアーティストが利用して、まったく関係ない外国の都市伝説と並列・接続して見せるわけ。

B うわー、「接続」しちゃうんだ。

A で、そういうふうに「外部」と「鮮やかな手つき」で「接続」されることは、地元のひとたちにとっては新しい回路が開かれることでもあって、単純にフックアップされる晴れがましさもあるのね。

B 深く考えさせられる問題系だなあ……。

A そう言えばいいと思ってるでしょ。

B 一概には否定できない。

A あと、「外部」と「接続」するためには、その対象としての福島が、「外部」に向けて、わかりやすくひとつにまとまってないといけない切なさ、もあったな。「わたしたちは震災で知らない誰かと手をつないだ」みたいな語りがあって、はっとさせられるんだけどさ。そもそも福島って日本で2番目くらいにでかい県で、浜通り、中通り、会津、ってわかれてるでしょ。

B 「会津」ってなんて読むの。

A あいづ、だよ。

B さざえ堂があるところはどこ?

A 会津。まあそうして、メンタリティも気候も米の味も、もちろん地震の被害も違う各地方が、福島の名のもとに一緒くたにされて、憐れまれたり忌避されたり、あるいは支援を受けたり、は、たぶんあったと思うんだよね。

B 結局、東京のひとがなかなか親身になるのは難しいってことかな。

A これは推測だけど、佐々木監督、取手(だっけ?)から赤羽を経て、いまでは鳥取を拠点に活動してるでしょ。たぶん鳥取あたりは文化に著しく乏しいから、だもんでそういうことに敏感になって、あらためて考え直したりとか、した結果も入ってるんじゃないかなあ。

B 鳥取県に失礼でしょ。石見銀山とか出雲大社とか、いろいろあるじゃん。

A どっちも島根。

B すみません。あとなんだっけ、松江哲明は関係あるの、この映画?

A ないよ。ただ、これ見るちょっと前に、松江哲明と加賀賢三の件が、再燃、っていうか、ようやく初燃焼したので、関係あるものみたいにして見ちゃったってだけ。

B アートのひともドキュメンタリー映画作家も、もちろん全員じゃないにせよ、人間を「材料」として見ちゃうひと、一定の割合でいそう。

A 話の流れで松江哲明の話に入るけど、いろいろ微妙で複雑だから、簡単にはまとめられない。自分が「童貞。をプロデュース」を見たのはだいぶ前で、それでも最初に公開?されてから何年かたってた頃で、普通にめっちゃ面白いなと思ったけど、ゼロ年代の空気とテン年代の空気は、もう違うんだよね。事実として。で、加賀さんがシネマ・ロサで逆襲した2017年ともいまとでも、まただいぶ違う。

B そういえばキミも、2017年の夏、子供のころに受けかかった性被害についてカミング・アウトしたんだったよね。

A まったく話題にならなかったけどね。またいつもの口から出まかせだと思われたに違いないさ。どちらかというと、ぼくがシンパシーを覚えるのは松江のほうで、なんでかっていうと、あのひとは反省の仕方がわからないひとでしょう。糾弾されている理由も、正確なところは理解できていないんじゃないかな。そういう気持ちは、というか気持ちのなさは、すごくよくわかる。

B キミが言うと説得力あるなあ。

A ただ、と同時に、それほど反省していなくても、きちんと形式にのっとって謝ることはできるでしょ、普通。それができないっていうのは、やっぱりしたくない、ってことなんだろうけど。まわりもなんとか言ってやれよ、と思うね。あの誰だっけ、直井とか。別に心がこもってなくてもいいし、他人が書いた文章でもいいから、普通のひとが見て普通だと感じられる程度の謝罪文を出して、そのうえで「童貞。」を封印しますって宣言すればいいじゃん。それで加賀さんと話をしてさ。そんなに難しいのかな。そういう、「型」がわからないやつは、なにやらせてもダメなんじゃないの、結局のところ。

B ああ。わかった。それでさっき、島根を連想したんだ。

A 「コールヒストリー」に戻ると、それまで話を聞いていなかったひとが、目の前の相手に向かって、話を聞かせてくれるよう頼むシーンがあるのね。

B なんか限りなくネタバレくさいな……。

A 自分なんかは素朴な観客=人間だから、ああ、反省して話を聞くつもりになったんだな、相手に向き合ったんだな、と思ったけど、考えてみたら、あそこは新たな悪夢の始まりでもありえる。

B そんな濃い人間風味の映画なのか。

A さっき、鳥の話が出たじゃん。「コールヒストリー」は、猪苗代湖の湖畔の白鳥とか鴨とか、鳥を見るのが楽しい映画でもあるんだけど、あ、赤べこも出てくるか、エンド・クレジットが、鳥が飛んでる映像なのね。ちょっともう忘れちゃったんで実際は違ったらごめんなさいなんだけど、飛んでる鳥に接写っていうかズームしてるのか、すぐにフレーム・アウトして、見た目の感覚では、鳥が映ったり映らなかったりする、目まぐるしくてスピード感のある画面なのさ。

B あんまり佐々木監督っぽくない?

A 2010年1月からツイッターをやってるらしい佐々木監督は、プロフィールに「取手→赤羽→鳥取(鳥に縁があるようです)」って書いてるくらいだから鳥が好きなのは間違いないとして、あのエンド・クレジットの、見えたかと思うと消えてしまって、じっくりと個体を認識することを許さない鳥たちは、現代のツイッターの、分散して迷走する言論たちの比喩なのかなと感じた。

B 鳥が嫌いなひとなんていないと思うけど、たしかに、テン年代初頭なんて最近のことだと思ってたのが、もう10年近く前になるんだもんなあ。

A 「コールヒストリー」の登場人物のひとりは、2011年の4月だか5月だかに福島から上京したって言ってた気がする。2011年の5月っていうと、ヤングシネフィルとミドルシネフィルの初めての中規模な顔合わせ、池袋でカラオケ行って、そのあとどこだっけ、飯くった頃だよ。その年の夏が、渋谷の文化村の屋上のビアガーデンに25人くらいヤングとミドルが集まったやつ。

B もうあの頃のヤングシネフィル、全員30超えてるんだよなあ。同じペースで映画見てるのは、とっとりくんくらいかな?

A そんなふうに、自分のテン年代を振り返らせてもくれる。2019年の年末にこの映画を見ることができたのは、そういう意味でもラッキー、グッド・タイミングだったな。

B キミの、というか実質的にはオレの、でもあるけど、テン年代はどんなだったかい。

A 食っていくのに精一杯だったね。余暇が少なすぎた。2020年代はたぶんほぼ全部子育てで忙殺されるだろうし。できることをできる範囲でやるしかない。

B 「コールヒストリー」、また見られるんだよね?

A 今度の日曜日、12月22日(日)17時から、イメージフォーラム・シネマテークで上映されるよ。あ、シネマテークってのは上映企画の名前で、会場は3階の「寺山修司」ね。(→☆)
 
B ありがとう。国立映画アーカイブで「東京オリンピック」見てから、行ってみようかな。

A ボクは下北でディスクユニオン行ってから中村まりを見に行くから、会えないと思うけど、楽しんで。

B うん。ところでこのページの上のほうに載ってる写真はなに。

A 「コールヒストリー」を見た帰りにヒカリエの近くのショウ・ウィンドウにいた鳥と、大塚駅の近くで死んでいた鳥だよ。

映画
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性懲りもなくリトル・プレスを作る
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

6月の終わりに「トラベシア」の4号を発行して、あっというまに4か月がたったところだし、そろそろ今回の号についてのまとめを書いておこうかな。リトル・プレスを作る前と、作ってる途中と、作ったあとの話を。リトル・プレスが好きなひと、自分でも作ってるひと、これから作りたいひと、などなどのみなさんの参考になる部分があれば幸いです。

同じような記事は、すでに2016年の創刊号のとき(→☆)と、2018年の第3号のとき(→☆)にも書いているので、繰り返しもいろいろ出てくるだろうけど、あまり気にしないことにする。

あと最初に言っておきたいのは、過去のふたつの記事のときは、参加者に払ったギャラの金額以外はなんでもかんでも書いてやるぜ、と勢い込んで書き始めたものの、いざとりかかってみるとそうもいかず、たびたび筆が止まってしまったのでした。

たとえば、やらかした失敗や改善したい点についてだとか。純粋に自分ひとりが責任を負うべき事柄ならそのまま書けばいいけど(休日に西荻に納品に行くときに間違えて快速に乗っちゃった、とか)、仮に編集上でこんな失敗をして……みたいに書いたとしたら、執筆者の中に「それって自分の原稿のこと?」と思って気にやんだり激怒したりするひとはいるはずで、それでは申し訳ない。一事が万事そんな調子でありまして、自分の金で好き放題やってるように見えても、100%そうではない。

○収支の話

まず恒例の、収支の話から。A5判、90ページのものを400部作りました。支出のほとんどは印刷費、そして参加者とスタッフ(デザイナーとイラストレーター)への謝礼。これが合計で29万円。この額が、直接の制作費になります。

現物ができたあとにかかるお金は、主にできたものを取扱店や通販購入者に送る郵送費(いままでのところ11500円)。直接納品に行くときの交通費とか、納品しに行ったときにその本屋でなにか買う費用とかまで「かかった金」に勘定するのはなんとなくセコい気がするので、そのへんはとくに記録してません。

入ってくるお金。これはかっちり決まっています。定価は600円、卸値は7掛けの420円。それが売れた分だけ。稀に、定価以上の額を振り込んでくれるひとがいなくはないけど、当初の想定より大幅に儲かることはありえない。

いまのところ売れたのは、直売で約70部=約42000円、店舗への卸しで約120部=約50400円。合計92400円。現時点でだいたい、20万円超の赤字。家にはあと150冊くらい残っているので、それが全部定価で売れたとして90000円。そこでようやく、赤字が10万円くらいにまで減る。あらかじめわかってます。どんぶり勘定。

○まだ作り始めない

こちら(→☆)で書いたとおり、今回の号のテーマを「日本語」にしようと思い立ったのは、前号の編集が最終段階に入っていた、2018年の5月でした。

そのとき私用でニューヨークにいたわたしは、ブルックリンでおこなわれた和モノのDJイヴェント「ニッポン・リーグ」に遊びに行きました。山下達郎や杏里なんかで外人(と、雑にまとめますが)が楽しそうに踊っているのを見るのは、予想していた以上に新鮮な感覚で、そこでゲストDJとして回していたのが、今回「あるガイジンの回想」を寄せていただいたヴァン・パウガムさん。菊池桃子『オーシャン・サイド』のレコードとかを見せてくれました。で、たしかその翌日か翌々日に訪れたのが「イースト・ヴィレッジにおける啓示」だったわけ。

思い付きを形にするのには、それなりに時間がかかります。「トラベシア」の毎号のテーマは「顔」「労働」「おかあさん」と、もともときわめて漠然としてはいるのですが、それにしても、「普通に読める日本語の雑誌」と銘打っていて、それで今度の号のテーマは「日本語」って、それじゃあまりにもなにも言ってなさすぎじゃないだろうか、との懸念はありました。それと、またしても雑な言い方になりますが、これだとあまりにも、SNSのプロフィールに「言葉が好き」とか書いてしまう系のサブカル女子みたいだなとも思いました(*1)。

わたしがイメージしていたのは、何度でも言いますが、永川玲二『ことばの政治学』のようなもので、そういえば3号のときのある方への原稿依頼にも、この本を引き合いに出した気がします(その方には結局書いていただけなかったのですが)。ところが、と受けるのが適切かどうか心もとないですが、ネットで「わたしの好きな日本語」とかで検索すると、「誰そ彼時」とか「うたかた」とか、そんなのばっか(でもないけど)出てくるのね。あんたはそうかもしれないけど、俺のあれしたい日本語はそういうんじゃないんだよね、と、とくに普段は意識してないけれどもずっと潜在的に考えていたあれこれが頭に浮かんできて、そうしてなんとなく、このテーマでいけるんじゃないか、と考えがまとまってくるのでした。

2018年春から始めた就職活動は夏を過ぎても終わる気配がなく、正社員になるのは諦めて派遣で探し始めたらようやく、秋になって仕事が見つかりました(*2)。たまたまですが、日本語から英語を経て多言語へと展開される文章を作る制作進行管理の仕事でして、いわゆるクリエイティヴ要素のない、実務だけする編集者みたいなもんです。結果的には、いろいろ役に立っています。

いまの仕事を始めたのがきっかけで日本語をテーマにしようと思い付いたわけではなく、それとこれとはまったく独立した話、と自分では思っていました。いまこうして振り返ってみると、むしろ話が逆で、「トラベシア」のテーマを日本語にしようというアイディアが、就職(≒人生)に影響を及ぼしたと言ってもいいのかもしれません。

○作り始める

原稿の頼みかたはひとつしかなくて、知り合いだろうがそうじゃなかろうが、相手が有名だろうが無名だろうが、書いてほしいひとにメールか口頭でお願いする、それだけです。創刊号あたりでは(直接存じ上げないひとたちには)おっかなびっくり声をかけていましたが、別に断られても、ただ断られただけで別に恥ずかしくない、と気付いてからはだんだん図々しくなり、頼みたいひとたちに気軽に依頼をしてみた結果、今回の号では国内外の10名様弱からお断りを頂戴しました(返事がなかったものも含む)。

理由としては、わたしの態度が悪かったとかタイミングが合わなかったとか、そんなところでしょう。それとたぶん、みなさんそれほど日本語に興味があるわけじゃないのかなと。でもほんとは、日本語に興味がないなんてそんなことありえる〜?! と思っています。だからやっぱり、頼みかたが悪かったのに違いありません。反省。

お引き受けいただけなかった方の詳細は失礼にあたるので詳細は書けませんが、海外のティームでのプレイ経験のある元プロ・スポーツ選手にお願いしたのは我ながら面白い発想だった、と自画自讃しておきます。

初めて書いてくださった方(の一部)について。

「非文の遊び」を書いてくださった佐藤麻弥さんはもともと知り合いで、自発的かつ日常的に大量の文章をブログで書いてらっしゃるので、わたしがわざわざなにかを頼まなくてもいいか、と思っていました。たまたま、岡俊彦さん主催の(本当の意味での意識高い系)上映イヴェント「サム・フリークス」のあと、松濤のベローチェで話していたら(ちょうどわたしがストレスで声が出なくなっていた「ゴッドファーザー期」)、佐藤さんの生活のうえでの日本語のかかわりについての話題になって、じゃあそれ書いてくださいな、とその場で原稿を依頼しました(そのかかわりのことは、書いてくれた原稿には直接反映はされてないようですけど)。

「親しんだり親しくなかったり」の王小葵さんとは、近所の日本語サークルで知り合いました。このテーマで作る以上は、非ネイティヴのひとによって書かれた日本語は絶対に必要で、じゃあ誰に頼もうか、となったときに、身の周りでは思い付かなかった。最初は日本語学校へ取材に行くことを考えてみたものの、得体の知れないリトル・プレスの取材をこころよく引き受けてもらえる予感があまりせず、躊躇していました。それでもうちょい調べてみると、豊島区のホームページに、半公認みたいな区内の日本語の会話サークルが10近くも紹介されていて、その中の、うちからいちばん近く、大塚駅近くでやってるものに連絡をとって、顔を出したわけです。

一度様子を見に行って、日本語が書けるひとを誰か紹介してもらって……というのが当初の構想でしたが、実際に行ってみると、そういうわけにもいかないとすぐわかりました。わたしにとって都合のよい奴を紹介してくれ、と言いにいくようなものですから。そこで、何度かかよっているうちに、いろいろな日本語学習者と話すのが面白くなり、いまも参加し続けています。思わぬ副産物でした(*3)。

もらった原稿への正しい反応の仕方は、いまだによくわからない部分が多いです。

理想的には、
(1)すぐ返事をする
(2)多少おおげさに褒める
(3)そのうえで改めてほしいところを指摘する
あたりでしょうか。(1)はいいとして、もらった原稿がいいものなのかどうかすぐにはわからないとか、直したほうがよさそうだけどどこをどうすればいいのか判断できないケースは、わりとよくあります。

今回だったか前回だったか忘れましたが、毎号書いてくれているある方から、「鈴木さんの反応が薄かったので、今回の原稿はダメなのかと思いました」と言われて、ハッとしました。実際はまったくそんなことはなく、単にわたしのケアがおろそかになっていたに過ぎません。プロの書き手ならともかく、「トラベシア」の書き手の大半はアマテュアのみなさんですから、そういうひとたちに対してこそ、即座に美点を見抜き、正確に指示を与えないといけない。

ただし言い訳をさせてもらえるならば、わたしとて編集者としての職業的訓練を受けているわけでなく、見よう見まねでやって失敗したら改善する、という方法でやっています。そして、20人くらいの執筆者を同時に担当して、全員に完璧なケアをするのは正直難しい(執筆者が多いのはわたしの意向なので仕方ないけど)。

この件について執筆者様にわたしから言いたいのは、繰り返し原稿を頼まれているとしたら、それはわたしがあなたを評価しているがゆえにほかならないのだから、少なくともそこについては自信を持ってほしい、ということ。

編集者としての仕事について反省する点があるとしたら、これぞと見込んで原稿依頼したひとの潜在的な力を、必ずしも充分に引き出せない場合があることです。もちろんタイミングとかその他もろもろあるので、すべてわたしのせいとは思わないものの、プロの文筆家でないひとに頼む以上は、おろそかなものを世に送り出すわけにはいかない。プロのひとは、言い方は悪いですが、ご自分の力と責任で書いていただけたら、それでよろしい。

○村松さんと畑中さん

デザインの村松道代さんと、イラストの畑中宇惟さんは、創刊号からずっとお願いしているおふたりです。このコンビがいないと、「トラベシア」はできあがりません。わたしにも当然、雑誌の見栄えに関するある程度の好みはあります。ですが、それを自分で実現するスキルもないし、それを無理にやるよりは自分のやりたいことに注力したい。信頼してお任せできるおふたりに出会えて、ラッキーでした。

村松さんには今回、いつも以上に変わった組み方をお願いする箇所が多くて、余計なお手数をいろいろかけてしまいました(お読みになったみなさまにはおわかりのとおり)。きっと面倒な作業を楽しんでもいただけたに違いない、とポジティヴにとらえています。ある原稿などは、村松さんの組み方によって、それまで文字データで読んでいたときの味わいというか意味合いが大胆に刷新されて、ほとんど別のもののように立ち上がってきさえしました。こればっかりは、自分で編集の作業をしてみないと決してわからなかったので、いい経験でした。

畑中さんにお願いするようになったのは、たしか、我が家でのホーム・パーティでポートフォリオを見せてもらったのがきっかけでしたかね。だから、イラストレーターでもなんでも、なにかを目指しているひとは自分の作品を(持ち歩いて)他人に見せるのは大切だと思います。もちろん村松さんのデザインもですが、表紙と裏表紙は雑誌の顔です。もしほかの顔だったらどうなっていたか、は、いまでは想像すらできません。畑中さんのイラストによって、未知の読者様との出会いの機会は間違いなく増えている、と確信しています。

○できあがる

さてまあ、こうしてこの文章も、できあがった最新号を各方面にお届けする段階にまで話が進みました。買ってくださったみなさま、本当にどうもありがとうございます。

店舗様への卸売りについて。さまざまなご縁で、新たにお取り扱いいただいた店舗様がいくつかあります。と同時に、いままで扱っていただいていたのに今回の号の案内にはお返事がなかった店舗様もいくつかありました(残念)。今回初めて、四国と沖縄の店舗様に扱ってもらうことができました。とはいっても、「トラベシア」が買える地域は、全国で10都府県にも満たないので、もう少し増やしたいですね。

直接販売について。わたしに知り合いが何百人もいれば、あるいは、直接の手売りだけでやっていけるのかもしれませんが、そうもいかない。今年は新たな試みとして、発売日に我が家でホーム・パーティをして、それを「リリース記念の即売会」と銘打ってみました。ホーム・パーティ自体はときどきやっているので特別なことをしている感覚はなくて、これの目的は、未知の執筆者同士の交流と慰労、そして初動で勢いをつけて売ること、です。

2018年の第3号のときは、リリース直後にイヴェント「渋谷並木座」をおこなって、そこでみなさんにけっこう買ってもらった気がします。自分がお客さんだった場合、リリース日とイヴェントが近いと気分的にもなんとなくいい感じがするわけですけど、主催者としてやってみてわかったのは、編集作業とイヴェントの準備を同時に進めるのはかなりしんどい。編集が滞って、イヴェント当日にリリースが間に合わないことだけは避けなくてはならないですし。

今年も「渋谷並木座」はおこなわれますが(後述)、開催がリリースから約5か月後なので、それまでに動きがあったほうがよいわけです。

で、即売会の話に戻りますと、一般のご来宅者さまには問答無用で押し売らせていただくことができて、また、執筆者様にはできあがったばかりの「トラベシア」を直接渡せる(送らなくていい)のがメリットです。デメリットがあるとしたら、せっかくみんな集まったのに感想が聞けないこと。なにしろまだ手に取ったばかりで、読んでないもんね。

今回初めておこなったことがふたつ。

ひとつめ。発売前、各執筆者に、ご本人様の部分だけでなく本文全体のゲラをPDFで見せました。これは単にいままで思い付かなかったのでやってませんでしたが、思い付いたのでやりました。やってよかったと思っています。

ふたつめ。献本。ツイッターなど、というか、ツイッターを見ていると「ご恵投いただきました問題」をときどき出てきます。「トラベシア」は、誰にも献本はしない姿勢を明確にしていて……と威張って言うことでもないんですが、普通に、たとえば自分があるひとの大ファンだとして、だからといってどうしてもそのひとに「トラベシア」を読んでほしい、みたいな図々しい発想にはなりようがない。もしそのひとの活動なりなんなりが「トラベシア」と関係あるとわたしが信じているとしたら、ただ献本するのではなく、原稿を依頼しますよ。

あわよくば宣伝してもらえるのでは、との純粋な下心で献本するのは、というかそれが献本の本質ではあるのでしょうが、なんか心がすさみそう。そんなんだったらPDFで献本しますけど、得体の知れない奴から100ページ近いPDFが来て、はいそうですかと読むほどヒマなひとはそうそういないでしょうし、いたとして、そんなひとがわたしが期待するほどの対世間的な影響力を持っているとは思えない。

いま思い出したけど、過去にたぶん一度、半分はずみみたいな成り行きで献本したことはあったわ。もっとも、その時点ではそういうつもりはありませんでしたが、そのひとには将来的になにかを頼む可能性はあるので、そうなるとわたし内部での基準には抵触しないことになります。

今回、自分として、これじゃ「献本」だなー、「献本」ってやつだ! と感じつつ進呈したのは3名様です(*4)。読んでくれてないひともいるだろうけど、それはまあよいとする。

○まだ出会っていない

こうして長々と書いてきた理由は、買ってくださったみなさまへのご報告と、まだお手に取ってくださっていないみなさまへの宣伝です。

買ってもらえてないみなさまの中にも、内容を知ったら欲しくなるひとがいるかもしれない。ということで少しばかり。文章の構成というか順番がおかしい気もしますが、ここまでの文章で話題になっている「トラベシア」とは、わたしが編集・発行・その他いろいろをしているリトル・プレスです。

普通に読める日本語の雑誌、というキャッチフレーズでやってます弊誌は、2016年に創刊され、いままで毎年1回ずつ発行されています。「日本語について」を特集テーマとして今年発行された最新号のデータ的なことは、こちら(→☆)をご覧ください。

このキャッチフレーズ、ひとによっては、挑発的であるとか、意味がわからないとか、各種の反応をもらうのですけど、作っている側の意図としては、こんな感じです。
・なにかの専門誌ではない。
・読むための前提があまり要求されない。
・なにかの体系的な知識は得られない。
・なにかのフォーマットにのっとっていない。

つまり、ここ数年のインターネットでバズりそうな要素とほとんど正反対のようなものである、と。

執筆者の選定にはわたしの嗜好が色濃く反映されていますから、いままでの号の案内をここいら(→☆)(→☆)(→☆)で見て、あなたの知っている名前があれば、それはそういうことです。あなたの知らない名前が多いとしたら(たぶんそうでしょう)、この雑誌の執筆者のかなりの部分が、自分の名前の露出度が収入とは関わっていない、いわゆる一般人だからです。もし万が一、あなたがいずれかの号についてすべての執筆者の名前を知っていて、なおかつまだ「トラベシア」を持っていないとしたら、きっとなにかの間違いでしょう。いますぐに買ってください。

ときどき誤解を受けることとして……「トラベシア」の執筆者のみなさまがある種の文化的/政治的総体を構成しているとかは、一切ないです。「カイエ派」みたいな意味での「トラベシア派」みたいなものは、存在しません。わたしと、わたしがお願いして原稿を書いてくれたひとたち、がいるだけです。

それでも、いままで一度でも登場したことのあるひとは、わたしにとってのある必然性のハードルをクリアしているのですし、一般人の中で複数回出てくれているひとたちについては、なおさらです。なおさら、というのは、「トラベシア」以外からもすぐにでも原稿依頼が来るべき、と思っている、という意味です。

本当に不思議なんですが、いままで、「トラベシア」に書いてる誰それさんにうちの媒体でも頼みたいから連絡先を教えてくれ、的な引き合いが来たことは、一度もないです。当然わたしはわたしの審美眼に自信を持っているので、この問題については、プロの編集者ってのも意外と見る目がないんだな、といつも思っていますし、これがいままでやってきた最大の心残り。

さて、じゃあ「トラベシア」に載っているのは実際にはどんな文章なんだよ、と言われると思いますが、各自どこかでどうにかして立ち読みしてください(取扱店は後述)。第3号に掲載された、小西康陽さんの「初期のサザエさん」は、小西さんのヴァラエティブック『わたくしのビートルズ 小西康陽のコラム1992−2019』(朝日新聞出版)に収録されていて、比較的容易に読めます。ただし「トラベシア」掲載のものとは、若干ヴァージョン違いです。

「トラベシア」の全体のクウォリティや傾向とどのくらい関係があるかは自分ではわかりませんが、主宰のわたし自身の書いた文章のひとつを、このブログに転載してあります(→☆)。ただし自分では、今回の最新号に書いた「米と油」が、いままで自分がこの雑誌に書いたものの中でいちばん面白いと自負しています。これもブログに載せるつもりだったんですが、ルビや写真が多くてうまく再現できないので、やはり誌面で読んでもらうのがよい、と考えています。冒頭部はこんな感じです(→☆)。

○これから出会うひとへ

宣伝の続きです。11月23日(土・祝)の昼間、渋谷のライヴ・ハウス、ロフト・ヘヴンで、「トラベシア」リリース記念イヴェント「渋谷並木座」Vol.3があります。詳細はこちら(→☆)(*5)。

「渋谷並木座」は、なるべく盛りだくさんな感じにしたいのと、いらっしゃったみなさんと執筆者のみなさんとの歓談の時間を設けたいのと、このふたつの意図で、映画上映+DJタイムという構成になっています。

11月23日は、映画は内村茂太監督の激レア短篇「猿! ゴリラ! チンパンジー!」を、このイヴェントのためにディジタル化してお届け(原版は8ミリ)。瞬間風速的には「オルエットの方へ」を超えているガールズ・わちゃわちゃ・ムーヴィです。おたのしみに。

それともう1本、参考作品(約100分)が上映されます。詳細は当日発表。昔の洋画(劇映画)ですが、いわゆる旧作邦画をある程度ご覧になっているひとが見たら、こんなところにも「日本映画」があったのか、とびっくりされるのではないかと思います。というかわたしはそういうふうに見ています。

その紹介ではあまりにも茫漠としているので、もう少しヒント的なものを。わたしがわざわざ時間と手間をかけて字幕を作るのですから、以下のようなジャンルや傾向やキーワードのものではありません。(こういったものがお好きな方を揶揄する意図はありません)
・狂気
・乾いた暴力
・推理もの
・ホラー
・スプラッター
・SF
・耽美
・ゴシック
・エロス

また、わたしが好きそうな、人権、コメディ、労働組合、教育問題、などとも、直接はかかわっていません。レンタル・ヴィデオ屋のジャンルでいうと、たぶん「ヒューマン」。

映画の上映のあとはDJタイムです。過去2回の「渋谷並木座」では、はるばる栃木県から、キッズDJデュオのmiro & nikaをお招きしました。今回はもうちょっと遠く、アメリカはイリノイ州シカゴから、ヴァン・パウガムさん(→☆)(*6)にご参加いただきます。

韓国、台湾、東南アジア各国で日本のシティ・ポップが再評価というか初評価というか一種のブームになっていることは、誰かの仕掛けとか話題先行とかじゃなくて事実であることは間違いないようですね。アメリカにおけるそのシーンを先導するひとりがパウガムさんだと思っています。削除されてしまったYouTubeは10万人を超えるチャンネル登録者を持っていました。いまではSoundCloud(→☆)などで精力的にミックスを発表しているほか、アメリカ国内外でDJをなさっています。

もともとアメリカのソウル、ディスコ、ファンクなどに強く影響されてできた日本のシティ・ポップが、アメリカ人のDJによって渋谷でプレイされるのは、わたしなんかにとっては異常に興奮させられるシチュエーションです。また、日本(語)の音楽に対してわたしが持っているようなアンビヴァレントな感情を持ってらっしゃらない健全な精神のみなさまには、ひたすら気持ちよい時間になるものと確信しております。

パウガムさんは11月の最終週は東京に滞在して、何度か各所でプレイなされるようです。「渋谷並木座」にお越しいただけないみなさまは、スケジュールをチェックして、ぜひどこかに聴きに行ってみてください。

「渋谷並木座」は、会場のロフト・ヘヴンのホームページにて予約受付中(→☆)。わたしに直接連絡いただくのでもOKです。

○ついに出会える

さて、ここまで読んで「トラベシア」が欲しくなった場合はどうすればよいか。11月23日の「渋谷並木座」では、最新号「日本語について」だけでなく、第2号「労働」も販売します。ほかの号は品切れです。ほかにも、以下の方法で買えます。

◎実店舗
最新号「日本語について」を卸した店舗の一覧です。売り切れているところもあると思います。各自ご確認ください。ただし、開店直後や閉店直前に電話するのは迷惑な場合もありますので気を付けましょう。

乃帆書房(秋田市)
PEOPLE BOOKSTORE(茨城県つくば市)
古書 アベイユ・ブックス(千葉県佐倉市)
ディスクユニオン北浦和店(さいたま市)
ディスクユニオンJazzTOKYO(東京・御茶ノ水)
ブックユニオン新宿(東京・新宿)
古書往来座(東京・南池袋)
Title(東京・荻窪)
タコシェ(東京・中野)
H.A.Bookstore(東京・蔵前)
本屋B&B(東京・下北沢)
古本と肴 マーブル(東京・東陽町)
本屋ロカンタン(東京・西荻窪)
ノラバー(東京都西東京市)
恵文社一条寺店(京都市)
Calo Bookshop & Cafe(大阪市)
blackbird books(大阪府豊中市)
1003(神戸市)
本屋ルヌガンガ(高松市)
ブンコノブンコ(那覇市)

◎通販
・BOOTHにて
「トラベシア」はこちらです(→☆)。pixivのアカウント登録が必要です。入金方法はPayPal、クレジットカード(VISAかマスターのみ)、楽天ペイ、銀行決済、コンヴィニ決済があります。

・直接わたしへ連絡する
メール(suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp)か、ツイッターのDM(@out_to_lunch)で連絡ください。入金方法はPayPal、銀行振込(三菱UFJ、みずほ)、アマゾンギフト券、LINEペイが可能。

◎文学フリマ
11月24日(日)に開催される文学フリマ東京(→☆)に、伊藤螺子さん(→☆)との共同ブース「ホテルニューオバケとトラベシア」(→☆)として出店します。ブースの場所は「ウ−38」。

「トラベシア」(最新号Vol.4とVol.2「労働」)、伊藤さんの短編集『UFOを待っている』、そして、わたしや伊藤さんが寄稿していたりしなかったりする批評誌「ビンダー」が販売されます。

「トラベシア」をお金を払って買ったり、「渋谷並木座」に有料入場したりしてくださるみなさまとお会いできるのを楽しみにしています。

−−−

*1→ 偏見かもしれないけど、そういうことを言う男子はあまり見かけない気がする。

*2→ 樫田那美紀(なみき!)さんが作っている「生活の批評誌」第3号「ひとりで無職」(→☆)に、無職時代を振り返った文章を寄稿しました。わたしのもの以外のも面白いので読んでみましょう。

*3→ わたしが行ってるのは、毎週土曜日の14時〜16時にやっているやつ(→☆)。お金などはかからず、申し込みも不要で顔を出してかまわないので、興味のあるひとは一緒に行きましょう。

*4→ 偶然ですが3名様とも名字のイニシァルがK。

*5→ ニュースサイトに載ってるほうがちゃんとしたイヴェントっぽく見えて、そういうことで安心したいひとは安心だろう、と思ってナタリーに掲載依頼を出しましたが、返事がないのでたぶん載らないんでしょう。イヴェントの中身自体はちゃんとしてますので安心してください。

*6→ Paugamというやや珍しい気がする名字、カタカナでどう書くのがよいのかを確認しようと思ったら、ご本人のサイトに「パウガム」とあったのでそれを採用しちゃいましたが、ポウガムとかポウギャムのほうが原音に近いのかもしれません。会ったときに訊いてみます。

◎写真は、ハワイ島コナで見かけた日本語と、池袋の火鍋。

雑記
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普通に読める日本語の雑誌「トラベシア」Vol.4 リリース記念イヴェント「渋谷並木座」Vol.3
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

普通に読める日本語の雑誌「トラベシア」Vol.4 リリース記念イヴェント「渋谷並木座」Vol.3

【日時】
2019年11月23日(土・祝)
開場 11:30
開始 12:00
終了 15:00(予定)

【上映】
12:00〜14:00
・内村茂太「猿!ゴリラ!チンパンジー!」(1995年/16分/デジタル上映)
・参考上映作品(約100分/詳細は当日発表)

【DJ】
14:10〜15:00
The original City Pop DJ from Chicago
Van Paugam
https://www.vanpaugam.com

【会場】
ロフト・ヘヴン
渋谷区渋谷2-12-13八千代ビルB1F
TEL:03-6427-4651
http://www.loft-prj.co.jp/heaven/

・渋谷駅東口から六本木通りへ。渋谷2丁目交差点すぐ。徒歩約8分。
・表参道駅から青山通りを渋谷方面へ。青山学院大学を左折して六本木通りへ。渋谷2丁目交差点すぐ。徒歩約8分。
・セブンイレブンとすき家のあいだの地下です。

【料金】
大人 1500円
高校生以下 1000円
(+別途ドリンク代600円)
*全席自由

【予約】
予約・当日とも料金は同じですが、予約が多ければ多いほどそれだけ安心して当日に臨めますので(わたしが)、よろしければぜひ。メール(suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp)かツイッターのDM(@out_to_lunch)にて、お名前、人数をお知らせください。当日精算となります。お店のサイトからも予約可能です(→☆)。

【内容】
普通に読める日本語の雑誌「トラベシア」(→☆)による、映画の上映とDJのイヴェントです。

たぶん7年ぶりの上映となる「猿!ゴリラ!チンパンジー!」は、内村監督のパブリック・イメージ/トレードマークである日記/エッセイ映画とはひと味違う、3人の女子の脱力冒険譚。誇張でもなんでもなく、最大瞬間風速的には「オルエットの方へ」を超えています。ほぼ最初から最後まで画面にあるものが映っていることとか、あまりにも特異な音楽の使い方とか、ともかく前回見たときから(比喩的には)ずっと忘れることができず、あるとき、「あっそうだ、自分で上映すればいいんじゃん」と気付き、このたび、上映することにしました。オリジナルは8ミリですが、今回は当イヴェントのために特別に製作されるデジタル素材による上映。テレシネはおそらく大西健児監督がやってくれるようです。

もう1本の「参考上映作品」の詳細は、当日のご案内とさせてください。日本語字幕付きの昔の外国語映画、白黒の劇映画です。東京ではここ15年間で2回くらいは上映されたことがあるので、めちゃくちゃレアというほどではないですが、たぶんこの監督の作品は日本盤のDVDは出たことがないので、貴重な機会ではあるかなと。

今回これを上映する理由は、自分がまた見たかったからなのはもちろんで、これは「並行世界で存在しえたかもしれない日本映画」だと思っているから、ということがあります。結果的にいままで日本ではこのような題材というか背景の映画は撮られてこなかったようですが(もしあったらご教示ください)、それでも可能性としては、充分に存在しえたと思っています。旧作日本映画ファンのみなさまのうちどのくらいの割合のみなさんが、わたしがしているようなやりかたで架空の日本映画史を楽しんでらっしゃるかはわかりませんが、たとえばこんなスタッフとキャストによって外国語で撮られた日本映画みたいなんですよ、と申し上げておきます。

監督……小林正樹 または 木下惠介
主人公(男)……久保明
主人公(女)……考え中
主人公(女)の父……月形龍之介

映画のあとは、「トラベシア」にも執筆してくださっているシカゴのヴァン・パウガムさん(初来日)による、メロウでバブリーな80年代日本のシティ・ポップDJをお楽しみください。たぶんすべてヴァイナルによるプレイです。昨年の5月、ニューヨーク、ブルックリンでの和モノ・イヴェント「ニッポン・リーグ」で彼とその他何人かによってプレイされる日本の音楽を聴いたときの不思議な感覚が、今回の「トラベシア」Vol.4の特集「日本語について」のインスピレイションの源泉の一部になっているのは間違いありません。SoundCloudにいろんなミックスがあがっているので聴いてみてください(→☆)。

当日はもちろん、「トラベシア」も販売いたします(最新号と、Vol.2「労働」のみ)。たくさんのみなさまにお会いできますことを。

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『コテコテ・サウンド・マシーン』&「トラベシア」発刊記念・共同自主企画「日本語と相撲と能とコテコテ」
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

『コテコテ・サウンド・マシーン』&「トラベシア」発刊記念・共同自主企画「日本語と相撲と能とコテコテ」

【日時】
2019年09月28日(土)
開場/開演 11:30
終了 15:00(予定)

【LIVE】
一噌幸弘(笛)
http://issoyukihiro.com/

【DJ】
浦風親方(DJ Sikisima)
鈴木並木(「トラベシア」発行人)
原田和典(『コテコテ・サウンド・マシーン』著者)

【会場】
LOFT HEAVEN
渋谷区渋谷2-12-13八千代ビルB1F
TEL:03-6427-4651
http://www.loft-prj.co.jp/heaven/
・渋谷駅東口から六本木通りへ。渋谷2丁目交差点すぐ。徒歩約8分。
・表参道駅から青山通りを渋谷方面へ。青山学院大学を左折して六本木通りへ。渋谷2丁目交差点すぐ。徒歩約8分。
・セブンイレブンとすき家のあいだの地下です。

【料金】
当日・予約 2000円
高校生以下 1000円
*ドリンク代が別途600円かかります。
*全席自由(椅子席)

【予約】
お店のサイトから予約可能です(→☆)。また、鈴木のメール(suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp)かツイッターのDM(@out_to_lunch)に、お名前、人数をお知らせいただくのでも大丈夫です。どちらも当日精算となります。

【説明】
ジャズ・グルーヴ、ファンク&ソウルの名盤・奇盤を約300タイトル、フル・カラーで紹介する『コテコテ・サウンド・マシーン』(スペースシャワーブックス)の著者・原田和典さんと、普通に読める日本語の雑誌「トラベシア」の発行人・鈴木並木(わたし)が、発刊を自分たちで記念するための催し。音楽で気持ちよくなっていただいて、財布の紐をゆるめていただいて、ご来場の記念にわれわれの本を買っていただくのが目的です。

内容は、ライヴ、DJ、トークの濃厚3本立て。ほかではなかなか実現しない顔合わせかと思います。

ライヴは、安土桃山時代より続く能楽師の血を引く重要無形文化財総合指定保持者の一噌幸弘さん。セシル・テイラー、デーモン閣下、石川さゆりなど幅広い共演歴を誇る、ジャンルを飛び越えた存在です。当日はデュオでの演奏を予定。他に類を見ない和洋融合の音曲世界をお聴き逃しなく。笛独奏でのバッハ。2分半と短いものですのでぜひお試しを。→☆

ゲストDJは、浦風親方(DJ Sikisima)さん。「渋谷系力士」の異名をとった元・敷島関です。『コテコテ・サウンド・マシーン』では原田さんのトーク相手として登場、帯でも「俺はやっぱりこっち側のジャズが好きだなあ!」と発言しておられる親方。脂っこ〜いプレイを聞かせてくれることでしょう。当日は歌わないと思いますが、ブギを歌っておられる動画がありましたのでご覧ください。5分半。→☆

また、この催し限定でタピオカドリンクも販売される予定。ふだんのロフト・ヘヴンのメニューには載っていないところ、わざわざ外部からタピオカの方をお呼びします。これは原田さんのアイディアでして、原田さんが最近大きな刺激を受けている存在のひとつがタピオカであるのが理由(もうひとつはソレイユ)。

詳しいタイムテーブルはいま考え中ですが、長丁場でも疲れないように途中にトークの時間をはさんだりしますので、そのあいだにフードやドリンクのおかわりを注文したりしてください(←こういうのライヴのMCで聞くと、余計なお世話だよ、と思ってしまいますが、今回は自分が主催者の立場なので言わせてネ)。もちろん、原田さんの『コテコテ・サウンド・マシーン』とわたしの「トラベシア」も随時お買い求めいただけます。

みなさまにお会いできるのを楽しみにしています!

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普通に読める日本語の雑誌「トラベシア」第4号発行のお知らせ
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

普通に読める日本語の雑誌|トラベシア|Vol.4|日本語について

2019年06月29日発行|400部
A5判|ヨコ書き(一部タテ書き)|90ページ
600円(税別)

対談|小原秀一×ジョー長岡|テレビ版 「まんが日本昔ばなし」の中の“にほんご”

伊子|日本語との縁
いしあいひでひこ|書いてる言葉(キーボードで)
伊藤螺子|休戦協定
ヴァン・パウガム|あるガイジンの回想
王小葵|親しんだり親しくなかったり
木村有理子|アラン・カミングの瞳
小松夏子|踊り場でてんてこ舞い
佐久間朋子|リップ練
佐藤柿杵|あることば(かなでなおしてでなおす)
佐藤麻弥|非文の遊び
城定秀夫|ことばのこと
鈴木並木|米と油
田口真希|川床亭日乗
寺岡裕治|書かれなくてもよかったのに日記
中野さやか|素甘考
原田和典|蒲田(専売所)行進曲
深堀骨|獅子河馬部考(素骨)
真付巳鈴|白いスリップが見えたら
豆田妙子|1995年のこと
水下暢也|詩の在り方に関する横書きの反散文詩
ムチコ|型抜き
若木康輔|翔太と美咲
渡邉寿岳|聞いた時から

イラスト・ロゴ原案|畑中宇惟
デザイン|村松道代
編集・発行|鈴木並木

【おわび】制作進行上の手違いによって、表紙および裏表紙イラストの解像度が、本来意図していたものよりも低くなっています。あしからずご了承ください。

◇社会を明るくする運動|鈴木並木
実家に帰ると家の内外の至るところに「社会を明るくする運動」のポスターがはってあって、長くなるので経緯は省くとして、ま、「そういう家」だと思っていただいて差し支えないわけですが、なんてひねりのないネーミング、とずっと思っていたのが、あるときから、「社会を明るくする運動」ね、いいじゃんいいじゃん、と感じるようになりました。

で、「トラベシア」、Vol.1「顔」、Vol.2「労働」、Vol.3「あかあさん」に続く第4号のテーマは「日本語について」です。

いちばん最初の原稿依頼メールは昨年の12月には送られていたので、結局今回もまた、つくるのに半年かかってしまいました。誇張でなく毎日、いろいろなやりかたで日本語について考えていて気付いたのは、この雑誌でやろうとしてきたのは言ってみれば「日本語を普通にする運動」であり、……くだくだしいので大幅に中略……、それはつまりわたしにとって「社会を明るくする運動」とほぼ同義なのだ、ということでした。

もともと、3号でいったん終わりになるつもりでいて、続けるとしたら違ったやりかたを考えないとな、とは感じていました。今回、本質的にはいままでと変わっていないようでありながら、わたし自身の意図と不可抗力とによって、細かい部分でちょこちょこと変化がもたらされています。物事なかなか思いどおりにはいかないものだなと痛感させられつつの編集でしたが、同時に、お読みくださるみなさまからの反応はいつもどおり、とても楽しみです。

発売初日には、我が家での即売会兼ホームパーティも予定されています。いくつかの書店様でも扱っていただくことになると思いますし、通販もおこないます。みなさまと日本語との新たな出会いのきっかけになれたら幸いです。

◇購入方法
○通販(本人から)
日本国内の場合、5冊くらいまでは何冊でも、送料一律180円です。それ以上は別途計算。国外は送料実費で対応します。ご住所、お名前、冊数、ご希望のお支払い方法、行ってみたい場所(任意)を、メール(suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp)またはツイッターのDM(@out_to_lunch)でお知らせください。折り返し、手続きについてご案内します。

支払い方法は下記からお選びください。前払いでお願いします。送料込みの合計振込額は、1冊→780円、2冊→1380円、3冊→1980円、です。

・三菱UFJ銀行口座への振込み
・みずほ銀行口座への振込み
・Amazonギフト券(メールタイプ) ←Amazonのアカウントお持ちでしたら、手数料かからず支払いできます。受取人を「suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp」と指定してください。
・LINE Pay ←わたしのIDを追加していただく必要があります。お問い合わせください。
・PayPal ←宛先のメールアドレスについてはお問い合わせください。

わたしの銀行の口座は昨年から変わっておりません。ご存知の方は、わたしからの連絡を待たずにさっさと振り込んでいただいても大丈夫です。あと、これはむろん強制ではないので読み飛ばしてくださってぜんぜんかまわないんですけど、既定の額よりいくらか多めに振り込むことによって、応援する気持ちを示すことが可能です。

○通販(サイト経由)
クレジットカードやコンヴィニ払いなどで購入したい場合は、BOOTHをご利用ください。知らないひとにメールなどを送ったりするのが生々しくて抵抗があるとか、面倒、という方も。結局わたしが家から発送するので同じことですが。「トラベシア」のブースはこちら →☆

○まとめ買い割引 Sale!!
Vol.2「労働」とVol.4「日本語について」を合わせて2冊以上お買い求めいただくと、送料無料となります。「労働」1冊と「日本語について」2冊、とかでもOK。ただしこの割引の趣旨は「労働」の在庫を処理することですので、「日本語について」だけ複数冊お求めの場合は適用されません。普通に考えてご理解ください。 BOOTHでは、「労働」と「日本語について」各1冊ずつのセットのみ販売いたします。それ以外の組み合わせをご希望の方は、わたしまで直接ご連絡ください。

○実店舗での購入 Tempo!!
2020/02/13現在、以下の各店舗でお買い求めいただけます。お店によってバックナンバーを取り扱っているところもあります。詳細はそれぞれのお店にお問い合わせください。ただし、開店直後や閉店間際に電話するのは失礼なのでやめましょうね。

乃帆書房(秋田市)
PEOPLE BOOKSTORE(茨城県つくば市)
古書 アベイユ・ブックス(千葉県佐倉市)
ディスクユニオン北浦和店(さいたま市)
ディスクユニオンJazzTOKYO(東京・御茶ノ水)
ブックユニオン新宿(東京・新宿)
古書往来座(東京・南池袋)
Title(東京・荻窪)  
タコシェ(東京・中野)
H.A.Bookstore(東京・蔵前)
本屋B&B(東京・下北沢)
古本と肴 マーブル(東京・東陽町)
本屋ロカンタン(東京・西荻窪)
YATO(東京・両国)
双子のライオン堂(東京・赤坂)
ノラバー(東京都西東京市)
恵文社一条寺店(京都市)
Calo Bookshop & Cafe(大阪市)
blackbird books(大阪府豊中市)
1003(神戸市)
本屋ルヌガンガ(高松市)
ブンコノブンコ(那覇市)

◇取り扱い希望のお店のみなさまへ Notice!!
「トラベシア」は取次などを通さない完全独立出版物となります。ありがたくも取り扱いご希望の場合は、suzukinamiki@rock.sannet.ne.jp までご連絡をお願いします。基本的には7掛けでの買い切りでお願いしております。送料当方負担、もしくは直接搬入で納品します。 なお、いわゆる書店様以外での取り扱いも大歓迎です。こちらの意表を突くような業種のお店からのご連絡も、お待ちしております。ご検討用の、内容サンプルもご用意しています。お気軽にお問い合わせください。

また、一応書いておきます。発売記念イヴェントをやってくださる奇特な書店様なども募集中です。こちらからの持ち出しさえなければ、ギャラの多寡は問いません。遠隔地で、交通費や宿泊費が発生するような場合も、全額負担してくれとは申しません。まずはご相談ください。ただしわたしの名前での集客はさほど期待できませんので、どなたか(執筆者やスタッフなど)との組み合わせ、あるいはわたしが司会進行的な役割のもののほうが、金銭的なダメージは少ないと思います。リトル・プレスをつくること、みたいな話ならいくらでもします。

◇リリース記念イヴェント Event!!
たぶんそのうちやります。なにかの映画を上映する予定。

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2018年の映画など
Posted by: 鈴木並木 SUZUKI Namiki (→Profile)

2018年に見た映画のなかで、よかったもの。並びは見た順。

ポール・キング「パディントン2」(2017/英語)
草野なつか「王国(あるいはその家について)」(2017−2018/日本語/150分版)
ラウル・ペック「私はあなたのニグロではない」(2016/英語)
ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(2017/英語)
ブラッド・バード「インクレディブル・ファミリー」(2018/英語)
三宅唱「きみの鳥はうたえる」(2018/日本語)
チャン・ジュナン「1987、ある闘いの真実」(2017/朝鮮語)
英勉「3D彼女 リアルガール」(2018/日本語)
ジョン・M・チュウ「クレイジー・リッチ!」(2018/英語など)
川口勉「彼らの原発」(2017/日本語)

☆スペシャル・メンション
ベストODS:花組 東京宝塚劇場公演『ポーの一族』千秋楽 ライブ中継@TOHOシネマズ新宿(3/25)
主演男優賞:ドウェイン・ジョンソン(「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」「ランペイジ 巨獣大乱闘」「スカイスクレイパー」)
ベスト・トーク:映画『三里塚のイカロス』DVD発売記念イベント「永続敗戦レジームと新左翼運動」@紀伊國屋書店新宿本店9階イベントスペース(出演:白井聡×代島治彦、8/2)
ベスト特集:戦後映画史を生きる 柳澤寿男監督特集@シネマヴェーラ渋谷

☆ほんとはこっち
エドワード・ヤン「一一」@香港・百老匯電影中心
只石博紀「季節の記憶(仮)」@新宿・ケイズシネマ
アラン・ベルリナー「The Sweetest Sound」@渋谷・ラストワルツ「渋谷並木座 Vol.2」

グッド10が新作だけになったのはたまたまです。日本語映画の2018年は、少なくとも21世紀に入ってからいちばん充実していた年のひとつだったと思うので、自分の属している場所以外にも目配りできる超人的な誰かに、きちんと振り返っておいてほしい。たとえば揶揄されがちな少女マンガ原作ものひとつとっても、5年前といまとではぜんぜん状況が違うはずで、となると、ここ10年くらいの動きを概観する必要があるわけだから、まあたいへんな作業ですよね。

個人的には、2018年のほとんどを無職として過ごすことになり、時間はあったもののお金はなく、あげくのはてには電車賃ももったいないという気持ちになったりもして、その結果、自分が楽しめなさそうな予感のするものは積極的に見送るという、とうの昔にできているべきだった習慣がようやく身につきました。しかしイーストウッドは何人かにそそのかされてうっかり見てしまったので、2019年以降は見ないことにする。

それとは別に、見たい気はするけど見逃してしまったものもそこそこあって、そうしたなかで、やっぱり見ておけばよかったなと思っているのは「心と体と」「サーチ」「ア・ゴースト・ストーリー」くらいかな。後者の2本はこれからどこかで拾えるだろうけど。

「ほんとはこっち」枠の3本について。

エドワード・ヤンの「ヤンヤン 夏の想い出」はたぶん3回目か4回目で、やはり彼の映画ではこれがいちばん好き。初めて訪れた香港、日曜の21時からこの3時間弱の映画を見て、外に出てみると、年に1回か2回あるかないかの、特別な経験だったんだなとわかった。どうやら自分は、母語以外ではエモくなれないというか、オンリー日本語キャン・ブレイク・ユア・ハート的な思いを無意識のうちに持っていたようなんだけど、呉念真とイッセー尾形の英語での対話を聞いていたら、それがくつがえされた。ここでふたりが英語で話すのは、たとえばハリウッド映画でアフリカの土人までもが英語で話すのとはぜんぜん別の必然性に基づいているわけよ! とか考えながら、旺角の宿まで歩いた。ビルの外壁工事の足場は、2018年になってもまだ竹で組まれてた。

「季節の記憶(仮)」については、すでにさんざん話したり書いたりした気がする。たった1週間のあいだ、1日1回、合計7回だけとはいえ、映画館の設備で上映された意義というか迫力というか破壊力は、これまたやはり、体験してみないと絶対にわからないこと。

「The Sweetest Sound」は自分で字幕を付けて上映(たぶんジャパン・プレミア)したので、少なく見積もってもトータル10回くらいは通しで見た計算になるはず。めちゃくちゃ勉強になった。普段、わたしも含めた映画ファンって、自分がわかるところだけ、生半可な知識でもって、戸田奈津子の字幕を笑いものにしたりしますが、1本の映画のすべての言葉を理解するって普通に大仕事だよ。小津とかの伝説でフィルムを1コマ切っただの切らないだとかの話があって、もちろんその境地に近づけるはずもないんですが、それでも、1秒の無限の長さだとか、字幕1文字2文字をめぐる攻防だとかを体で覚えられたのは財産になりました。それはもちろんこの映画が、そうしたシヴィアな時間(=編集)の感覚を持った作品だから、というのも大きい。結局のところ自分にとって、映画とは編集(=時間をどう操作するか)なんですよ。ほんとはこれが2018年のベスト。

「季節の記憶(仮)」と「The Sweetest Sound」の上映活動をめぐっては、宣伝の重要性についてもなにかと考えさせられました。たいして面白くもないひとたちや作品が、宣伝によってさも大層なもののような印象を与えるのに成功しているのを見るのは、負け惜しみではあるんだけど、正直言って腹立たしかった。2019年はなるべく、実力以上に評価されたいし、身のまわりの面白いひとたちを盛り立てていきたい。ただ有名人とつるみたいだけのつまらないひとたちは、反省しながら虚空へと消滅していっていただきたい。

普通に読める日本語の雑誌「トラベシア」は、今年も発行される予定。ただしいままでとは若干顔ぶれが異なってくるはずです。

本年がみなさまとわたしにとって、楽しいこといっぱいの、よい年になりますように。

映画
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