
A もう今年も終わりだね。なにかこう、1年を振り返ったりはしないのかい。
B たぶんキミがここで求めているのは映画に関する発言なんだろうと思うけど、公正さを期するために、一応、妹が交通事故に遭ったこととか、息子が小学校に入学したこととか、中古のマンションを購入した際の苦労とか、そういった、架空の人格としてのぼくの2011年度版の私生活についてもざっと触れておくべきなのかな。
A インターネット上にしか存在しない架空の人格がそこまで神妙になる必然性はないと思うよ。
B そんならいいや。まるで実在の人物のような、映画以外のことを考えているような複雑なパーソナリティをことさらかもしだしたところで無意味に事態を複雑化させるだけだから、映画のことだけ話すことにする。
A ツイッターやブログだと、年間ベスト作品の発表が始まっているけど、ああいったものについてはどう考えているのかい。
B 個別のリストについて言いたいこともあるけれど、全般的に指摘したいのは、どうして年内に集計/発表するのかなってことだね。大晦日も映画見たりするだろうにさ。あとは、商業的メディアやプロの批評家ならともかく、素人が新作のみで選んだりしているのを見るとときどき、窮屈な感じがするときがある。
A ふむ。
B 自分のことを言うと、今年も映画はよく分からなかったな。いいものが1割、見ても見なくても差し支えないものが8割、残りは見ないほうがよかったもの、って感じだったかな、例年どおり。もちろん、どんな映画でもたいていは、作られるにあたってそれ相応の人手と資金と時間と技術がつぎ込まれていることを考えたら、こんな発言はできないとは思うけど。
A 分からないっていうのはどういうことかい?
B 分からないっていうのは分からないってことだよ。だから何でもいいけど、2011年のベストテンとかに選ばれた映画のタイトル言ってみてよ。たいていぼくの感想は「よく分からなかった」だと思うよ。
A でも、そんなにいろいろ見たのかい。
B 新作のベストテンを選ぶなら、ほかのひとが挙げた作品について「それ見てません」となるべく言わずに済む状態になってるのが望ましいと思ってるのね、ぼくは。10本中8本くらい見たら、資格はあるかなってのがぼくの基準。今年はがんばって見たけど、いろいろ見落としてる。意図的にせよ、やむなくにせよ。だから10本中で言ったら、せいぜい5本くらい。毎月最低あと5本ずつは新作見てないとベストテン話に加われない。ついでに言うと、映画祭にもほとんど行ってないしね。
A 見てないものに言及できないのは当たり前だし、そんなことはみんな織り込み済みなんじゃないのかい。
B もちろん、そんなこと気にせずに好き勝手に発言すればいいんだとおもうよ。ただ、だったら正しさを主張したり、映画を代弁したりしないでほしいってだけの話で。これは別に誰のことも揶揄してないけどさ。ベストテンって、美学と政治と大喜利が混ざってるもんだと思うわけ。
A 混ざってるべきっていうことかい?
B 「べき」っていうか、もうどうしようもなく混ざってるもんだと。いや、混ざっててほしいっていう感じかな……よくわかんない。美学っていうのはおごそかなものだよね。自分の眼を信じるっていうか。政治も必要だよ。さほど注目されてない作品は多少えこ贔屓すればいい。リベートをもらったら上位にぶち込むしね。
A 大喜利っていうのは。
B そのまんまだよ。笑いをとろうとしてほしいってことだよ。Be yourself, be real.ってことだよ。
A それって美学と違うのかい。
B 違う違う。大喜利は世間に対する態度のこと。美学はオタクの論理。スクリーンは枠じゃなくて窓なんだと思うよ。
A じゃあそろそろキミのベストテンを聞かせてくれないかい。
B たぶん、新作に限定したものは、INTROに1月の半ばくらいに載るはず。ただし日本映画と外国映画3本ずつのリストになるとおもう。
A 少ないね。旧作はなにがよかったのかい。
B 午前十時の映画祭で見た、「E.T.」だよ。
A 2012年の抱負みたいなものはないのかい。
B 今年は無意識のうちに、さまざまな局面で裁いたり裁かれたりしたから、そういうところから全力で遠ざかりたいね。くだらないヒエラルキー、知のマチズモには関わらない。
A そんなことを言ったら、業界内での立場が危うくならないかい。
B ときどき誤解されるけど、ぼくは映画に関することをして収入を得たりはほぼしてないよ。試写状もごくたまにしかもらってないし、それどころかむしろ、一般試写のプレゼントにハガキ書いて応募してる。自腹を切って見てるから、そういう意味ではプロの観客だよ。
A どういうこと?
B 間接的に映画に投資してるってことだよ。
A しがらみのない意見を発することができるってことかい。
B ぼくの書くものがおもしろくないのはその、しがらみのないのが原因だと思ってる。金もらって、字数とか〆切とか内容とかを著しく制限されたほうが、頭を使うからね。そのささやかな実例を、年明けてから遠からぬうちにお見せできるとおもうんだけど。とにかく金は好きだよ。
A ところで写真は誰なんだい。
B 「ノルウェイの森」の水原希子だよ。2012年は、金をもらって映画や音楽に関する原稿を書いたり、かわいこちゃんにインタヴューしたりしたいよ。
A 訊いてないよ。